激しさを増す環境変化に適応し、ビジネスを加速させるには? 大規模調査で判明した、テレワークとIT投資の「急所」ウィズコロナを耐え、アフターコロナへ進むために

コロナをきっかけにIT活用の機運が一気に高まった日本企業。一方、課題が山積することでどのような道筋を描けばよいのか悩む企業も多い。大規模調査で見えた、不確実性が高まり、環境変化が激しい時代に求められるテレワーク運用やIT投資のヒントを紹介する。

» 2020年12月10日 10時00分 公開
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 2020年は、新型コロナウイルスの感染が広がったという記憶とともに、テレワークが一気に浸透するなど、ITを活用してビジネスを大きく飛躍させるきっかけの1年となろうとしている。

 とはいえ、ITに関する課題が山積することによって、まず何をどうやって変えていけばいいのか、という課題へ立ち返らざるを得ない担当者も多いことだろう。今、テレワークやDXを巡ってどんな課題が具体的に見えてきているのか。そして、不確実性が高まり、環境変化が激しい時代でも競争力を維持し、強いビジネスをつくり上げていくにはどういったことをしていけばよいのだろうか。

 そこで、ITmedia ビジネスオンライン編集部は2020年10月に大規模調査を実施。573件の有効回答数を得た。コロナ禍でテレワークが普及したといわれるが、実際のところはどのように進んでいるのか。そして、一定程度定着したことによって新たに見えてきている課題はどういったポイントなのだろうか。また、その課題を乗り越えるためには何が必要なのか。調査結果を基に、見ていこう。

「8割」の企業がコロナ禍で変化 テレワークの実施状況は?

 調査はいくつかの節に分けて質問した。最初の節である「テレワークについて」で得られた結果から見ていこう。まず注目すべき数字として、「8割」を掲げたい。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を前にして、「変化」を受け入れた企業の割合だ。

 緊急事態宣言により働き方がどのように変わったかを質問したところ、「新たにテレワークを導入した」という回答の割合が約40%(小数点以下第1位を四捨五入、以下同)と最多だった。加えて、「もともとあったテレワークの制度を拡充した」が約39%と続く。東日本大震災などを経てテレワーク制度を構築した企業は一定数出たが、あくまで「緊急避難的」に構築したにすぎず、今回のコロナ禍のような中長期に及ぶ危機的状況に対応するには不十分だった企業も多そうだ。「テレワークの導入を検討開始した」と答えた約5%を加えると、8割超の企業が変化を受け入れた。

 次に、テレワークを実施している企業の実情を見てみよう。テレワークを巡っては、紙とハンコとの結び付きが比較的強いバックオフィス部門で出社せざるを得ない状況などがフォーカスされることもあったが、今回の調査では「全部門・全事業所でテレワークが前提」との回答割合が最多だった。ただ、次点で回答が多かったのは「一部部門・全事業所がテレワーク」(約23%)と、まだ部門によっては「テレワーク格差」のある企業も一定数あることが分かる。なお、頻度に関しては「週に1、2日程度がテレワーク」が最も高く約28%だった。

「テレワークを変わらず維持」は半数未満 後戻りしてしまった理由は?

 テレワークを巡っては、緊急事態宣言後に「出社前提」とする企業が話題になるなど、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」的にビフォーコロナ状態へ戻ってしまうケースも話題になった。今回の調査で、緊急事態宣言後に勤め先がテレワークを維持した人の割合は約49%で、いったん危機が去った後にビフォーコロナ状態に戻った企業も少なくないことが分かった。

 では、テレワークをやめてしまった背景には、どういった課題感があるのだろうか。緊急事態宣言後にテレワークをやめた企業に勤める人の回答では、「コミュニケーションがとりづらい」が最多だった。それ以外の企業も合わせた全体に質問した「テレワークを実施・検討するうえでどのような点が懸念材料になっていますか?」という設問でも、ネットワークのキャパシティーや在宅勤務中の回線速度、セキュリティや電話といった多くの課題を押さえて「コミュニケーションがおろそかになる」が最多。唯一50%台となり、約56%の人が回答した。

テレワーク中もコミュニケーションの「質」を維持するには?

 とはいえ、テレワークになったからといってそのままコミュニケーションがおろそかになってしまう、とは一概には言い切れない。

 確かに対面であれば、相手の顔や身振り手振りなどを見ながら質の高いコミュニケーションができる。しかし、多くの企業ではチャットツールなどでこれまで以上に効率的なコミュニケーションがとれるようになってきているだけでなく、ビデオ会議ツールもふんだんに活用することで、対面で行うのとそう変わらないようなコミュニケーションを構築することは徐々に可能になってきている。

 オンライン上でこなすコミュニケーションが、やや対面でのコミュニケーションに「質」が劣るとしても、その分場所を問わず、移動時間などを必要としないことから、タイムリーなコミュニケーションがとれるようになった。「量」を増やすことで、「質」を取り戻すことができるはずだ。

「セキュリティもキャパシティーも十分」はわずか3割

 コミュニケーションの総量を増やしていく上では、ネットワークの増強も欠かせないだろう。特に在宅勤務中は、ネットワーク環境が整ったオフィスと違い、ネットワークが十分でないことも多い。実際に、今回の調査でもコミュニケーションに次ぐ課題として多く挙がったのがネットワークのキャパシティーだった。

 テレワークの課題解消に関するIT投資動向を聞いた質問では、「会議システム、チャットなどのコミュニケーションツール」を押さえて、より基礎の部分である「ネットワークの拡張・整備」と答えた人の割合が高かった。

 なお、ネットワークを増強する際に注意したいのが、セキュリティにも目を向けるべきだという点だ。テレワークによりオフィス内外を問わず、あらゆる場所からアクセスすることが増える中で、従来型の境界型セキュリティを刷新する必要がある。この、ネットワークキャパシティーの充実とセキュリティの堅固化を両立できている企業は、なかなか少ないのが現状だということも、今回の調査では明らかになった。「セキュリティ対策が強固でキャパシティーも十分」と回答した企業は約28%にとどまっている。

「ゼロトラスト」と「SASE」が新たなキーワードも、実装済みはごくわずか

 ネットワークとセキュリティを巡って注目を集めるキーワードが2つある。「ゼロトラスト」と「SASE」だ。

 ゼロトラストとは、従来型の「内部は安全で、外部が危険」という考えに基づいた境界型セキュリティとは違い、「ネットワークの信頼性の排除」「ネットワークアクセスのセグメント化」「可視性の確保と分析」の3つの理念を基本とした考え方を指す。分かりやすく言えば、「性悪説」に基づいてセキュリティを構築するイメージが近い。テレワークだけでなく、サーバのクラウド移行が進むなど、内部と外部のネットワーク境界がこれまで以上にあいまいになる中で、必須のコンセプトといえるだろう。

 一方のSASEは、「Secure Access Service Edge」の略で、簡潔にいえばネットワークやセキュリティにかかわるサービスをクラウド上で完結し、ユーザーや端末が時間や場所を問わず、安全に効率的にアクセスできるようになるようなグランドデザインを指す。クラウド上で一括管理することによって、IT担当者の負担軽減や高いユーザー体験の確保、リスクの軽減といったメリットを期待できる考え方だ。

 しかしながら、今回の調査では両者ともに認知度が低く、さらに実装済みだと回答した人はゼロトラストが「約4%」、SASEは「約2%」と、非常に低い結果となった。まだ知名度が低いとはいえ、今後あらゆる企業で必須になっていくことは間違いなく、より浸透していくことを期待したい。

既に多くの企業が実践する、これからの働き方とは?

 テレワークで多くの人が課題に挙げた「コミュニケーション」を向上させるには、ネットワークやセキュリティへの投資が必要なことは分かった。しかし、テレワークで高い質のコミュニケーションを実現できるようになったとしても、全てをオンラインで完結させようとせず、対面でのコミュニケーションを行う場を残すことは、当然必要になってくる。そのためには、オフィスの在り方を見直す必要があるだろう。具体的には、これまでの「仕事をする場」としてだけのオフィスではなく、コミュニケーションのハブや、イノベーションを創発する場としての活用が想定できる。

 そこで多くの会社が選びそうなのが、オフィスを維持しつつも「在宅勤務かオフィス勤務か」の二者択一ではなく、「在宅勤務もオフィス勤務も、そしてサードプレースも」柔軟に活用する、ハイブリッドな働き方だ。実際に今回の調査でも、多くの人が既に「テレワーク限定」や「オフィス出社のみ」ではなく、「テレワーク・オフィス出社を組み合わせたハイブリッド型」で働いていることが分かった。

 ハイブリッドな働き方を実現し、働く場所を多様化できれば、コミュニケーションだけでなく、生産性の向上や事業継続性の確保、そして従業員のロイヤリティー向上など、さまざまなメリットも期待できるだろう。

キーワードは「ビジネスレジリエンス」

 ここまでが今回の調査で見えてきた、不確実性や環境変化に対応し続けられるために必要なIT環境の課題や解決のためのヒントだ。具体的には、セキュリティを強固にしつつ、どこでも高い生産性を維持して働ける環境をオンライン/オフラインともに構築し、コミュニケーションを活発化させながら新たなビジネスの付加価値を創出していくことこそが、肝となってくるだろう。

 こうしたITを軸に「攻めと守り」を両立する次世代のスタンダードは、「ビジネスレジリエンス」というキーワードで表現できる。コロナ禍で一気に進みつつある日本企業のDXだが、これからも予期しないような事態は起こり得る。そんなときに備えて、今こそ「自分ゴト」として捉え、改革を実践するべき時だといえるだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年12月16日