三井物産の「挑戦と創造」を支える新本社 働き方のコンセプトとその背景にあったものとは目指すは6つのDX

本社移転とともにITインフラをアップデートした三井物産。次なる「挑戦と創造」実現のため、働き方のトランスフォーメーションに着目し選んだのが、シスコシステムズのソリューションだった。選定のポイントや導入効果などについて解説する。

» 2021年01月12日 10時00分 公開
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 大手商社の三井物産は2020年5月、本社ビルの移転を行った。これに伴い、全社的にシスコシステムズのネットワークアーキテクチャ「Cisco DNA(Digital Network Architecture)」を導入した。新たな挑戦と創造を生み出す職場体験を実現する「Work-X」プロジェクトを支えるために、自由度の高いITインフラとして、世界65カ国・地域の133拠点をつなぐネットワーク基盤を刷新した形だ。

 今回は、ITを起点とし、ニューノーマル時代に求められるビジネス環境を構築した経緯や働き方のトランスフォーメーションについて、同社デジタル総合戦略部 部長補佐 石黒太郎氏とデジタル総合戦略部 デジタルインフラ室 藤田尚樹氏、人事総務部 Work-X室 祝拓也氏に伺った。

三井物産は20年5月に本社移転とともにネットワークを刷新した

グローバルのネットワーク基盤をアップデート、DX事業戦略における「6つの攻め筋」

 三井物産はデジタルトランスフォーメーション(DX)を、デジタル技術を活用した生産効率の改善やビジネスモデルの変革・創出により、新しい価値を産み出し収益力を向上させることと定義している。

デジタル総合戦略部 部長補佐 石黒太郎氏

 また、20年5月に発表した中期経営計画の中で「変革と成長」を標ぼうしている同社は、基盤事業の収益力強化を図る「既存事業のアセットを基盤としたDX」「売買・物流基盤でのDX」「消費者事業基盤でのDX」と、これらを通じて獲得したノウハウやナレッジを活用して実現する「社会インフラなどの大型DX」「新技術活用視点からのDX」「産業破壊/創生視点からのDX」を6つの攻め筋としている。

 デジタル総合戦略部 部長補佐の石黒氏は、「DXを進める上で、比較的スピーディーに実現できる攻め筋と、時間がかかる攻め筋を分けて戦略を定めています。前者でQuick Winを実現しながら、後者でBig Winを目指す、という形です」と説明する。

新しい働き方に合わせて、シスコソリューションを選定

デジタル総合戦略部 デジタルインフラ室 藤田尚樹氏

 「シスコシステムズ様のソリューションは、当社でも従来、国内外の拠点で利用しています」と話すのはデジタル総合戦略部 デジタルインフラ室の藤田氏だ。「海外拠点のネットワークは18年からCisco SD-WANとCisco Merakiの導入を進めています。今後は国内拠点にも、順次展開していく予定です」(藤田氏)

 このように海外拠点のWANに関してはCisco SD-WANを活用しながら、LAN部分に関してもクラウドマネージ型のCisco Merakiを無線/有線を問わずエッジまで利用することでコストと運用性、セキュリティ確保のバランスを取った構成となっている。

 一方、新本社ビルでは、収容人数のボリュームやさまざまなシステムとの連携などを考慮し、Cisco DNA CenterとCisco SD-Accessを採用しているという。

 藤田氏が話す通り、もともとシスコシステムズのソリューションを活用していた三井物産。ネットワーク基盤を刷新し、国内外ともにシスコソリューションをフル活用する大きなきっかけとなったのが、本社移転プロジェクトだった。

 「新本社ビルは、旧本社ビルを建て替えたものです。建て替えのため、いったん14年に仮オフィスへ移転し、20年に新本社ビルへ帰ってきました。新本社ビルのネットワークについては18年から本格的に着手しました。このとき、オフィスの在り方を巡ってグループアドレスやフリーアドレスにするのはどうか、という意見が出てきました。議論の結果、業態に合わせ、自ら場所を選び、生産性を高める”ABW(Activity Based Working)”を採用し、旧来型の固定席というフロアレイアウトはなくすことになりました」(藤田氏)

 その結果、組織ごとにエリアが決められ、各人がエリア内で自由に席を選ぶグループアドレス制が導入されることに。それだけでなく、フロアの中には組織を問わず、また協業する外部の人も入ってきてコラボレーションできるようなスペースも構築した。

Activity Based Workingを採用し、さまざまな工夫が凝らされた新本社

 ただ、場所が固定されず、あらゆるところで社員が働くことにより、必要な通信を必要に応じて利用できるように、柔軟で動的なネットワークを構築する必要性が生じた。加えて、社員の位置情報を把握するシステムや空調管理システム、顔認証ゲートシステムなど、新本社ビルではさまざまなシステムを活用している。それらを受け入れるネットワークを実現するために選んだのがCiscoのSD-LAN技術であるCisco SD-Accessとそれらを統合的に管理運用するためのCisco DNA Centerだったのだ。

どこでもつながるネットワークを構築、海外では通信速度が10倍に

 導入効果について、藤田氏は「新本社ではアクセスポイントを高密度で設置し、フロアのどこにいてもWi-Fiを快適に利用できるようにしました。また、接続するユーザー・端末を識別し、それぞれに適したネットワークの提供をCisco SD-Accessにより実現できています」と話す。

 海外拠点でもCisco SD-WAN導入により大きなメリットが生まれている。これまでインターネットへアクセスする際は、MPLS(IP-VPN)を経由してデータセンターのインターネット回線を利用していた。MPLSは国によっては2Mbps程度の帯域でも10万〜20万円のコストがかかっていたそうだが、Cisco SD-WANを導入してインターネット回線を利用することで、数十Mbpsといった帯域を同程度のコストで利用できるようになった。単純計算で、海外拠点の通信速度が10倍以上に高速化したことになる。ネットワーク速度が遅いため従来使われにくかったMicrosoft 365を始めとするSaaSも、今まで以上に活用度が高まっているという。

コロナ禍は「予期していなかった」 それでも混乱なく適応

 20年春、新型コロナウイルスの感染が広がり、緊急事態宣言が出たことでテレワークを余儀なくされ、混乱した企業も多かったことは記憶に新しい。その一方、三井物産ではあまり混乱はなかったそうだ。

 「当社では18年に、社内の『情報戦略委員会』において“Anywhere Any Device”というコンセプトを策定していました。コロナ禍以前から、自宅でもカフェでも会社でも、場所やデバイスを選ばずに仕事ができる環境を作ろうと必要な投資や準備を進めていたのが、スムーズに対応できた大きな要因かと思います」と石黒氏は振り返る。

 また三井物産では、社員が「個」として成長し、新しい価値の創造を目指すというコンセプトで「Work-X」というプロジェクトが進められている。そのプロジェクトメンバーの一人が人事総務部 Work-X室の祝氏だ。

人事総務部 Work-X室 祝拓也氏

 「われわれの部署では、新しい働き方のコンセプトを作っています。具体的には、変化が激しいこの世の中で、どんな状況にも対応できるような働き方や、柔軟性を持ったオフィスの構築を推進しています。コロナ禍というトラブルは予期こそしていませんでしたが、もともと自分にとって最高の場所を選んで働くABWというコンセプトも交えてオフィスを作っていたので、ソーシャルディスタンスが必要になったときも、柔軟に働き方を調整することができました」(祝氏)

好評を博すオンラインイベント データ起点のPDCAサイクルも回していく

 オフィスというハード面だけでなく、ソフト面でも改革を進める。テレワークになり顔を合わせなくなったので、Outlook上で社員の顔写真を載せるなど、コミュニケーションの醸成にも努めている。また、2000人以上が参加する全社的なオンラインイベントも開催した。これまでに2回開催されており、社長自らが登場してメッセージを発信するなど、経営幹部と現場との間でこれまでにないコミュニケーションも生まれている。

 社内外に向けたオンラインイベントは好評で、開催の要望も多く寄せられるようになった。ただ、動画配信用のPCを業務で使っているネットワークにつなげると、遅延や切断といった悪影響が出かねない。そこで別途、動画配信用のインターネット回線を導入し、安定した配信を可能とした。このような対応もCisco SD-Accessの機能を利用し、事前に登録した動画配信用PCはオフィス内のどこで有線LANやWi-Fiに接続しても動画配信用インターネット回線へ接続される構成を実装したという。そのおかげで、毎回ユーザーは特に難しいことを意識しなくても、安定した回線で配信できるようになった。

 「新本社ビルでの働き方や利用するデジタルツールは入居時点で完成ではなく、どんどん進化していくという考え方で柔軟性や拡張性を持ったネットワークを検討してきました。実際に入居後のさまざまなシチュエーションやニーズへ柔軟に対応できたのは、シスコシステムズ様のソリューションのおかげです。これまでのネットワークでは何をするにしても、お金や時間がかかっていたのですが、今はユーザーがやりたいことをスピーディーに実現できるので便利になりました」(藤田氏)

データ活用やDX人材の育成効果にも期待

 最後に、今後の展望や期待していることについて話を聞いた。

 「社員にもっとデジタルを身近に感じて欲しいです。まずはその効果を自ら体感することで、他への活用や新しいアイデアを得るきっかけになると考えています。われわれとしては、この新社屋を使って、そういった環境をどんどん整えていきたいと考えています」(祝氏)

 「クラウドファーストはもちろん、今であればゼロトラストなどの考え方がどんどん出てきていますが、そうしたトレンドを捉えて生産性を高められるIT環境を整備していきたいですね。DXをさらに進めるという点では、アプリケーションやシステムの基盤となるパブリッククラウド側の環境も整備していかなければいけないと考えています」(藤田氏)

 「デジタル総合戦略部としては、DXを担う人材の育成に注力しています。当社は総合商社としてさまざまな事業機会がありますが、ビジネスとデジタル両方に精通した”DXビジネス人材”がまだまだ足りません。シスコシステムズ様や三井情報様のご協力のもと、快適・高速なインフラを整え、学びの機会を提供し、コラボレーションの機会や質を高めて、人材のレベルアップを図っていきたいですね」(石黒氏)

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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2021年1月25日