外国人にも人気の「缶コーヒー」が、なぜ2017年から低迷しているのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2021年05月25日 10時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

缶コーヒー単体で売ることが難しい

 さて、そんな日本の「低価格・高品質」を象徴する缶コーヒーだが、ここにきて消費者人気が低迷しているのをご存じか。「缶コーヒーをよく飲むサラリーマンがテレワークで自宅にいるからでしょ」と思うかもしれないが、コロナ禍以前から「コーヒー人気が高まっているにもかかわらず、消費が落ち込んでいる」のだ。

 全日本コーヒー協会の「日本国内の嗜好飲料の消費の推移」によれば、「缶入りコーヒー飲料」の消費は96年を100とするとじわじわと下がり、2019年には73にまで落ち込んでいる。

 同協会によれば、コーヒー全体の国内消費量は右肩上がりで、96年には35万2189トンだったものが、19年には45万2903トンにまで膨れ上がっている。また、前出「日本国内の嗜好飲料の消費の推移」でも、「コーヒー飲料」全体は90年を基準にすると、19年は146%、つまり、1.5倍弱にまで膨れ上がっている。つまり、日本の消費者の「コーヒー愛」は右肩上がりなのに、「缶コーヒーだけ」がパッとしないのだ。

コーヒー全体の消費量は増えているのに……

 と聞くと、「市場は縮小しているかもしれないが、最近はやや持ち直してきているのでは? 鬼滅缶が空前の大ヒットというニュースを見たぞ」と感じる方もいらっしゃるかもしれない。確かに、ダイドードリンコが缶コーヒーのラベルに人気アニメ「鬼滅の刃」をあしらった通称「鬼滅缶」がコロナ禍に1億本を売り上げる大ヒットとなったのは事実だが、これをもってして「持ち直した」と言うのはかなり苦しい。

鬼滅缶が大ヒット(出典:ダイドードリンコ)

 むしろ、鬼滅ブームに便乗しなくてはいけないほど、缶コーヒー単体で売ることが難しくなっていることを世に示してしまったというべきだろう。実際、缶コーヒー市場シェア1位(売上本数)のジョージアでさえ、20年9月には「当たり」がでれば缶コーヒー1本と交換できる「運だめしキャンペーン」、同年12月には「機動戦士ガンダム」とのコラボキャンペーンをスタートして今年もそれを継続している。

 このような売り方が悪いと言っているわけではない。ただ、人気キャラとのコラボはファンやコレクターが買うので確実に売り上げが伸びる一方で、やめたときの反動が恐ろしくてズルズルと依存を強めてしまう。つまり、ドーピングで高記録を出したことで、薬物依存に陥るアスリートのようになってしまうのだ。以下の記事でも飲料業界の人間から、そのような危険性が指摘されている。

 『コラボ缶、鬼滅のもろ刃 コーヒー多様化で市場縮小、てこ入れ 営業利益倍「麻薬」懸念も』(毎日新聞、5月24日)

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