外国人にも人気の「缶コーヒー」が、なぜ2017年から低迷しているのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2021年05月25日 10時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

缶コーヒーの活躍の場

 実はIOCはWHOとパートナーシップを結んでいて、「ノースモーク五輪」を掲げ、開催都市に対して五輪と引き換えに、「国際基準の禁煙規制」を受け入れることを求めてきたのである。実際、かつてはそこかしこでタバコが吸えた北京もソチも五輪開催を機に規制が強まっている。つまり、五輪とは「タバコ撲滅運動」を世界に広めるイベントでもあるのだ。

 東京都と日本政府は、まんまとそれに乗ったというわけだ。

喫煙者の割合(年代別、出典:厚生労働省)

 このように17年からのタバコへの逆風が、30〜40代の喫煙者がガクンと減らし、それが缶コーヒーの消費の落ち込みに影響を与えた可能性はないか。

 少し古い調査になるが、マイボイスコムが10年に発表した「たばこの利用調査」と「缶コーヒーの嗜好調査」を組み合わせた2テーママッチング分析によれば、男性喫煙者の3人に1人(31%)が1日1本以上缶コーヒーを飲用していた。非喫煙者で1日1本以上缶コーヒーを飲んでいるのが12.6%にとどまっていたことと比べると、「缶コーヒーとタバコ」をセットにしている愛煙家がいかに多いかが分かるだろう。

缶コーヒーとタバコの関係

 これを踏まえると、缶コーヒーの消費低迷は、ペットボトルコーヒーの増加もさることながら、缶コーヒーとセットで楽しむタバコを吸う人間が減ったことが何よりも大きいのではないか。

 缶コーヒー片手にタバコをプカプカ吸うのは、かつて日本のサラリーマンの標準スタイルだった。缶コーヒーが普及した70年代の男性の喫煙率はなんと8割近くもあった。しかし、今や喫煙率も2割弱まで落ち込んだ。そのような意味では、「タバコの友」である缶コーヒー人気が低迷するのも当然かもしれない。

 とはいえ、冒頭でも述べたように、日本の缶コーヒーは、世界中のコーヒー愛好家が驚くほど高いクオリティーまで進化を遂げた強みもある。

 また「缶」という容器に関しても、長期保管できることや、輸送しやすいなどのメリットが多い。パンデミックや自然災害などのリスクが増している世界で、日本の缶コーヒーの活躍の場はまだあるはずだ。

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