外国人にも人気の「缶コーヒー」が、なぜ2017年から低迷しているのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2021年05月25日 10時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

窮地に追いやられてしまった背景

 では、なぜ世界の人々がうなるほどの「うまさと安さ」の両立を実現した日本の缶コーヒーは、人気キャラコラボという“麻薬”に頼らざるを得なくなってしまうほど窮地に追いやられてしまったのか。

 よく言われるのは、「スタバのようなカフェがたくさんできた」「コンビニコーヒーが普及した」という理由だ。要は、コーヒーの飲み方が多様化してきたことで、もともとの缶コーヒーの顧客が流れてしまっているというワケである。

 理屈としては非常に納得感のあるストーリーではあるが、データを見る限り、この2つが缶コーヒー低迷の主たる原因というのにはやや疑問がある。「スタバのようなカフェ」「コンビニコーヒー」が急速に普及していく大逆風の中でも、缶コーヒーはかなり善戦してきたからだ。

 先ほどの「日本国内の嗜好飲料の消費の推移」を詳しく見てみると、96年から99年まではプラスで、00年からマイナスに転じるが、なんと16年までは「96〜94」の水準でかろうじて踏ん張っていたのだ。それが17年に息切れしたかのように、90に落ち込むと、翌18年にダムが決壊したように一気にガクンと下がって80となり、19年に73まで落ち込むのだ。

缶コーヒーの消費量が減少している(出典:全日本コーヒー協会)

 スターバックスのWebサイトを見ると、日本市場で100店がオープンした99年に「全国展開が本格化」とある。スタバを中心としたカフェの乱立が缶コーヒーの低迷に影響を与えているのなら、00年前半からもっと派手に缶コーヒー消費が落ち込んでいないと辻つまが合わない。

 また、コンビニカフェに関しても、ローソンは11年、ファミマが12年にスタートさせて、13年のセブンカフェで一気に普及する。セブンーイレブン・ジャパンのリリースによれば、わずか半年の7月には累計1億杯を突破して15年2月末には11.5億杯になったという。これを踏まえれば、13年くらいから缶コーヒー消費に影響を与えていてもおかしくないが、先ほども申し上げたように、現実には16年までそれほど顕著に落ちていないのだ。

 つまり、缶コーヒー消費に致命的なダメージを与えたのは、実は「カフェ・喫茶店の増加」や「コンビニカフェ」ではなく、17〜18年に突発的に発生した「何か」である可能性が高いのである。

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