コンビニの攻勢で菓子店が減っているのに「シャトレーゼ」は大躍進 コロナ禍で発揮した強みとは?長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2021年08月31日 16時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

プレミアム感を打ち出すヤツドキ

 ヤツドキの店名は、おやつ時に由来するのは誰もが分かるが、それだけを意味していない。「八」の字の縁起の良い、末広がりも表している。そして、八ヶ岳の大地で育まれた厳選された素材にこだわるというお店のコンセプトが込められている。店舗で厳選素材を使って、つくり立て、焼き立ての商品を届ける趣旨で展開し始めた。

 東京都心部から展開したが、「競合店が多い地域だからこそ違いが際立つ」といった立地戦略上の狙いもあった。

ヤツドキでは店内でお菓子をつくる

 素材を八ヶ岳エリアに限定しているゆえのプレミアム感を、明確に伝える。そのため、正式名称を単なるヤツドキから、「Chateraise Premium YATSUDOKI(シャトレーゼ・プレミアム・ヤツドキ)」に変更している。変更したのは今年の初め頃だ。

 従来のシャトレーゼは、郊外ロードサイドの駐車場付き店舗が多く、低価格で高品質な商品が売りだ。シャトレーゼを代表する商品「チョコバッキー」は、バニラまたはチョコレート味のアイスの中に、軽快な食感のチョコレートをランダムかつどっさり入れたアイスバーで、ミルク感あふれる味わいが魅力。その内容で、1本64円の値段ならば毎日でも買えてしまうほどだ。コストパフォーマンスが非常に良いお店のイメージがある。また、車で行けて非接触性が高いからコロナ禍で流行した面がある。

お土産需要を狙う

 ヤツドキでもチョコバッキーは売っているが、メインとなるのは、徒歩や電車で来店する顧客の手土産(オフィスのお土産も含む)ニーズだ。また、ギフトだけでなく自分へのご褒美で購入する人も多い。

ヤツドキのYATSUDOKIプレミアムアップルパイ(出所:シャトレーゼ公式Webサイト)

 ヤツドキの人気商品は、「八ヶ岳南牧村契約農場しぼりたて牛乳のカスタードシュー」(270円)、「八ヶ岳明野町契約農家うみたて卵のプリン」(270円)、「苺ショートケーキ」(583円)、「プレミアムアップルパイ」(370円)や「一粒栗のマロンパイ」(324円)といったパイ類などが挙げられる。

ヤツドキの八ヶ岳南牧村契約農場しぼりたて牛乳のカスタードシュー(出所:シャトレーゼ公式Webサイト)

 シャトレーゼの商品は、鮮度の高い牛乳や卵、フルーツ王国山梨の果物と、素材の秀逸さを生かした濃厚な味のするものが多い。一方、ヤツドキでは、さらに八ヶ岳の恵みにこだわってブランディングされている。商品数は、シャトレーゼが400アイテム以上なのに対して、ヤツドキは約150アイテムと絞り込まれている。

 コロナ禍によって都心部の観光客が激減し、テレワークの影響もあり、客層に変化が出てきた。そのため、ヤツドキの立地は、本来の顧客の居住地に近い大都市郊外の駅前などにまで広げている。東京なら吉祥寺の他、自由ヶ丘、阿佐ヶ谷、石神井公園。大阪なら江坂、千里中央のような店舗群で、立地の変更が功を奏している。

 同社・広報ではヤツドキが好調な理由について「なんといっても、トレーサビリティーと商品のクオリティーで、お客さまにご満足いただいているのではないか」と説明する。生産工程の経路が確かで安全性が高く、素材を厳選しているからクオリティーが高い。

 しかも、シャトレーゼの店と同様に、途中の流通過程で卸を経ていない。自社工場からの直送だから価格を上回る価値、つまり値段以上の高品質で提供できるのだ。

 それに加えて、人々がコロナ禍で都心部や遠距離を乗り継いで、有名な専門店や百貨店に行く機会が減っているのも、郊外の駅前にも出店するヤツドキにはプラスに働いている。

シャトレーゼの糖質カット商品群 小麦粉の代わりに大豆粉、食物繊維を使うなど工夫した(出所:シャトレーゼ公式Webサイト)

 一方、シャトレーゼが好調な要因として、糖質カット50〜88%のケーキ、シュークリーム、アイス、ピザなどの商品群が挙げられる。巣ごもりの影響を受けて、食生活が変化した。そして、体重を気にするようになった顧客に選ばれている側面がある。アイスだけでも100種類以上ある豊富さも、支持されている。

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