リテール大革命

テクノロジーを賢く使う「次世代スーパー」がやっている、“勝ち組企業”になる法則3選国内の事例(1/2 ページ)

» 2022年06月01日 07時00分 公開
[持田圭介ITmedia]

 コロナ禍は、消費者の行動様式を変え、店舗が自ら消費者に近づいていかなければならない状況を生み出した。筆者が所属するEYストラテジー・アンド・コンサルティングの調べでは、「企業の成長にはエコシステム全体の観点で新技術を取り込むことが必要」と認識している企業が8割を超えた。しかし実際にPOC(概念実証)などに取り組んでいる企業は3割にとどまっている。

 新技術を取り込むにはどのようにすればいいのか。本記事では、スーパーやコンビニといった食品中心のチェーンストアが、リテールテック活用に取り組む際のポイントを考察する。チェーンストアのリテールテック活用のポイントは3つある。

 一つ目のポイントは、小売業として基本的なサービス品質の向上。つまりスピードや利便性を高め、買い物時の不便を解消することだ。二つ目のポイントは、買い物代理人として必要不可欠な存在になること。顧客一人一人に合わせたソリューションをテクノロジーによって提供する方向性だ。三つ目のポイントは、リアル店舗とデジタルの融合によって新たな顧客体験を創り出すことだ。

 これら3つのポイントに沿って、事例を3つ紹介する。

ポイント(1):レジ待ちゼロを目指す戦い

 買い物時の不便を解消するアプローチとして、店舗でのレジ・会計の利便性の向上が挙げられる。こうした取り組みは比較的早くから行われてきたが、ここにきて新しい動きが出ている。

 例えばイオンのレジゴーやカスミ・マルエツのスキャンアンドゴーでは、スマートフォンアプリでバーコードのスキャンと決済を行える。有人レジに並ばず、会計できる仕組みだ。

 レジの利便性を向上させるには、スキャンや画面遷移の反応の速さや、少ないタップ回数で買い物が終わるといった、店内カスタマージャーニーの短縮化が重要になる。

photo イオンが導入したレジゴーの画面=2020年10月撮影

 ダイエーとNTTデータは、天井のカメラと棚の重量センサーで商品を認識するウォークスルー店舗の実験を始めた。スマホアプリをかざして入店後、欲しい商品を手に取って退店すれば自動的にクレジットカード決済されるため、レジ精算やバーコードのスキャンなどの作業が一切不要な買い物を実現するという。

 取り扱い品目は約600、売り場面積は37平方メートルとコンビニの5分の1程度の規模で一般客への開放もまだ(本記事公開時点)だが、類似業態では国内最大規模であり、今後の展開に期待したい。

photo ダイエーとNTTデータが実験を始めたウォークスルー店=ニュースリリースより

 トライアルカンパニーでは、事前に顔写真とプリペイドカード情報を登録することで顔認証決済ができる新店舗を4月20日に開業した。顔認証機能はまだ関係者限定で、一般顧客に開放されるのは少し先になりそうだ。同店は店内のカメラで弁当などの売り場の在庫状況を把握して、AIの分析により最適なタイミングで電子値札と連動し値下げを行うシステムも導入する。

 同社では各店舗に「賢いカート」の配備も進めている。液晶画面やバーコードスキャナーの付いたショッピングカートで、決済ゲートを通過すればレジをスルーできる。同社はリテールテックを利便性向上につなげることに成功したといえる。

ポイント(2):買い物代理人、次世代ネットスーパー

 二つ目に、買い物代理人として、なくてはならない存在になるという方向性。これにもリテールテックの活用が関わっている。

 顧客が注文した商品を、売り場でピックアップし、カートに入れていくネットスーパー担当者の姿はもはや当たり前の光景だ。しかし、リテールテックで先行した次世代ネットスーパーは、商品のピックアップのみや配送、すなわちフルフィルメント業務のみを代行するのではないし、それをリアル店舗の貴重な人員に頼って行うのでもない。

 イオンは、ネットスーパー大手の英国企業オカドと提携し、同社のAIとロボット技術を活用した大型フルフィルメントセンターと、次世代ネットスーパー事業を2023年に立ち上げると発表している。1000台以上のロボットが24時間体制で、最大5万品目から6分間に50品目をピッキングできるのだという。

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