東京より人口が少ないイスラエルに、アップルが拠点を構える理由イスラエル発ニュービジネス

» 2022年08月31日 08時40分 公開
[平野貴之ITmedia]

 アップルが新しいプロセッサの開発のために、イスラエルのエルサレムに3カ所目の開発拠点を開設した。

 近年、インテルに依存してきたアップル社は、自社製のチップへと方向転換を図っている。アップルのイスラエルトップであるローニー・フリードマン氏は、実はインテル出身だ。彼は、6月に行われたイベント「Geektime Code 2022」で、イスラエルを選ぶ理由を次のように言い切っている。「革新と創造性を持つ、非常に優れたエンジニアが集中している場所がイスラエルである」

photo 提供:ゲッティイメージズ

 アップルは過去2回、イスラエルで“成功”している。(1)テルアビブ近くのハイテク企業が多く集まるヘルズリヤ、(2)マイクロソフト、インテル、グーグルなどが集積し「シリコン・ワディ」と呼ばれているハイファ──それぞれに既に拠点を開設している。

 これまでにApple Watchの通信コンポーネントや、iPhone/iPadのFace IDシステム、そしてアップル初の独自プロセッサ「M1チップ」の開発まで行っている。イスラエルの開発拠点は非常に重要な役割を果たしており、既に約2000人が2カ所の拠点で働いている。

 またアップルは、3D感知技術のPrimeSense、顔認証技術のRealFace、写真解析技術のCameraiなどの会社を買収。積極的に投資をしてきたが、これらはイスラエルの企業だ。iPhoneユーザーは毎日、イスラエル企業の技術を利用しているともいえる。

 イスラエルには、企業家精神・アントレプレーナーシップを強く持つ優秀な人材が多くいる。アップルはイスラエルにそうした人材がいることを理解した上で、買収という手段から拠点の開設まで力を入れているのである。

 世界的企業がイスラエルを注視している例の一つとして、アップルを取り上げたが、これは氷山の一角である。

photo 筆者作成

 筆者は、日本に上陸していないイスラエルのハイテクスタートアップを、ゼロイチから日本展開する事業を2002年から手掛けている。この20年で感じたことは、イスラエルの歴史的背景、異文化コミュニティーから生まれてきたイノベーティブなアイデア、そして諦めない精神を持ちながら実行・実現するという、イスラエル人ならではの気質だ。

 イスラエルは、東京より人口が少なく、約940万人しかいない国だ。だからこそ、彼らはイスラエル国内よりも世界規模での事業展開を常に意識している。目的をしっかり持ち、絶対に諦めない起業家精神とガッツを持つ──。日本人も、そんなイスラエルのビジネスマンから多くのことを学べると感じている。

著者紹介:平野貴之

ベアーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役社長(CEO)。

イタリア・オリベッティ社に入社し、英国ケンブリッジ大学との共同最先端技術の部隊「マルチメディアタスクホース」に選ばれ、NTT、日本IBMなど最先端技術販売に成功し、社長賞、トップセールスなど多数受賞。その後、日本初上陸最先端テクノロジーに魅かれ、米国DirecTV技術を利用した通信衛星インターネットサービス会社の立ち上げに設立から従事し、ソニーミュージック、ソフトバンク(当時、日本テレコム)、日立電線などから3億5000万円の出資を受け新会社ダイレクトインターネット社設立に成功。

日本をはじめ、香港、マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリアなどグローバルビジネスデベロップメントも経験。

最先端テクノロジーを誰でも、いつでも、どこでも利用できるような、豊かな未来創りに少しでも役立っていきたい、もっとスピード感のある日本社会、そして幸せな生活プラットフォーム作りを支援し、提供していくために、1996年ベアーレ・コンサルティング株式会社を設立。

イスラエルビジネスのパイオニアとして、2001年からイスラエルハイテクスタートアップ企業への支援事業をスタート、現在も支援事業を拡大中。

ベアーレ・コンサルティング株式会社の公式サイト

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