スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/5 ページ)

» 2022年10月28日 05時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]
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収益性の見通しが悪化し、減損損失が必要に

 スシローではおとり広告の問題が起きて以降、集客に苦戦し業績は悪化していました。結果として、店舗の収益性に関しても将来の見通しが悪化します。そうなると店舗の使用価値が下落するので、減損損失が必要になりました。

 このため、業績不振になったり問題が起きて想定を下回る事態が起きたりすると、実際の業績悪化に加えて「減損損失」という過去の投資の失敗分の損失も加わり大きな業績悪化につながります。

大赤字の決算でも、蓋を開ければ減損損失ということも

 ちなみに減損が起きる順序を考えてみると、固定資産を取得してから減損という順序になります。1億円の店舗を作り終わった後に、収益性が低下した場合に減損損失が起きますよね。

 ということは、減損が出たからといって、会社から新たな資金の流出があるわけではありません。大幅な業績悪化にはつながっても、財務状況が悪化するわけではないのです。

 場合によっては、企業は減損損失の影響で何百億円・何千億円といった大赤字に陥ります。そうしたニュースが出ると、「あの会社は倒産するんじゃないか」なんて声が上がることがありますが、以前の投資が失敗だったというだけで資金の流出が無いのであれば、倒産につながるケースは少ないです。

 もちろん投資を失敗したことは間違いないわけですし、何か問題を起こしてしまったのであればそれが今後にも悪影響を与えることはあります。借り入れをして店舗を作っていればその返済が滞り倒産するようなケースもあるでしょう。

 しかしながら、減損が起きた時点では資金の流出はないので、すぐに何かが起きるわけではないということは分かると思います。

 前回の引当金のケースでもそうでしたが、決算上の数字というのは実際の業績悪化以上に大きな赤字や業績悪化につながるケースが多々ありますし、実際の資金の流れと業績の悪化は一致していないことが多いです。

 このため、どういった要因で業績悪化が起きているのかを知っておくことは重要ですね。減損が何なのかを知っているかいないかでは、今後のニュースの見え方が変わるのではないでしょうか。

 次回はフジテレビを例に取り上げます。

筆者プロフィール:妄想する決算

決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。

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