春節始まるも、中国人観光客が「日本」ではなく「タイ」に流れるやむを得ない事情中国の「海外旅行マネー」の行きつく先は(2/2 ページ)

» 2023年01月23日 12時44分 公開
[岡安太志ITmedia]
前のページへ 1|2       

中国側の制限も 

 もう一つに、中国側の日本への海外旅行に対する制限も挙げられる。中国人は日本の大使館にビザを直接申請することはできず、必ず中国の代理店を通す必要がある。現在代理店は、一部の個人向け訪日観光ビザしか申請を受け付けていない。そのビザの取得には厳しい所得制限があるため、限られた富裕層しか日本に来れないのが実情だ。

 一方でタイでは、中国本土からの入国者に対して水際対策は実施していない。ビザ取得も日本と比較すれば容易だ。観光が主要な産業であるタイは、コロナ禍後のインバウンド需要の復活に国を挙げて取り組む。実際にタイには春節連休が開始してから、中国人を含む多くの外国人観光客が訪れている。タイ国政府観光庁は「今年中に500万人の中国人観光客がタイを訪れ、タイを訪れる外国人観光客の総数は2500万人になる」と予想する。

中国人の人気旅行先であるタイ(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 タイは日本と並んで、中国人に人気の海外旅行先の一つだ。Trip.comの調査によると、2020年の春節で中国人の渡航先として最も多かったのは日本で、その次にタイが続いた。長らく海外旅行に行きたくても行けなかった中国人の「リベンジ旅行」需要は、ビザが取りにくい日本ではなく、タイに流れている。

2020年の春節期間の人気旅行先(出所:Trip.com プレスリリース)

 コロナ禍前である2019年、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、中国人観光客は日本に950万人以上訪れ、約1.7兆円を落とす日本のインバウンドの“最大顧客”だった。その復活の時は訪れるだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.