ベンチャー航空「トキエア」 “したたか”な戦略も、就航延期を繰り返すワケ宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(4/4 ページ)

» 2023年08月11日 07時30分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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「ベンチャー系航空企業」に学ぶ、トキエア成功の道筋

 先に述べた通り、大手の傘下に入らない航空会社が、安定して生き残るのは相当に難しい。「トキエア」が航空ベンチャー企業として14年ぶりの参入を控える今、一定の成功を収めている同様の企業の戦略を紹介しよう。

 航空ベンチャー企業として09年に就航したFDAは、参入から14年間で中堅航空会社としての地位を築き上げた。創業後6年も続いた単年赤字を補填(ほてん)。背景には、100%出資の親会社である大手物流企業「鈴与」のバックアップが大きいといわれている。鈴与から8代目鈴木與平社長や役員・関係者がFDAに乗り込み、各就航地での関係を構築。「着陸料減免」「利用促進への確約」などの優位な条件を引き出した。

 このような「航空会社としてのパワフルな営業体制」が、爆発的な勢力拡大として現れたといえるだろう。

トキエア 「フジドリームエアラインズ」機体。全16機を全国でカラー展開している

 また、熊本県・天草地方に拠点を置く「天草エアライン」の経営も参考になるだろう。

 同社は、自治体や県の出資により、いわば「空のローカル線」として1998年に設立。一時は破綻寸前に追い込まれたものの、地元・天草での根強い利用促進キャンペーン・自治体からの補助、そして「3路線をプロペラ機(ATR42)1機でカバー」「社員全員での機体水洗い」「職域を越えた“マルチタスク”業務遂行」という徹底したローコスト経営で、見事に業績を立て直した。

 機体には、天草のイルカをモチーフにした斬新な塗装が施されている。ワクワクするようなデザインとていねいなサービスには根強いファンも多い。

 一方でトキエアは、新潟県内での盛り上がりは目立つものの、就航先である札幌や仙台・名古屋・神戸での積極的な動きがまだ少ない。利用者あっての航空会社だからこそ「就航地の皆さん、トキエアをみんなで盛り上げてください!」という、強く泥臭いメッセージの発信を、そろそろ聞きたい。

 トキエアが新潟だけでなく各就航地でしっかりと顧客を獲得し、重宝され、数多くのワクワクを生み出す会社となることを、願ってやまない。

宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。

また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。

 noteでは過去の執筆記事をまとめている。


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