自販機業界に地殻変動? 「140円」の缶コーヒーは高いと感じるのに、「1000円」のラーメンが売れるワケラーメン、カレー、駅弁(5/5 ページ)

» 2023年08月28日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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 全国清涼飲料連合会(東京・千代田区)と日本コカ・コーラ(東京・渋谷区)によると、国内で清涼飲料用自販機が導入されたのは1962年です。三菱重工と米国のベンド社が、自販機の「V-63(半自動)」と「V-144(全自動)」を、東京コカ・コーラ社に納入して880台が全国に設置されました。これこそが「コカ・コーラ自販機第1号」であり、国内自販機市場のルーツとされます。その後、67年に100円硬貨が大量に流通したこと、74年に日本独自の「ホット&コールド機」が登場したことで飲料自販機が全国に普及していきました。

 確かに筆者が小学生のころ、自販機であたたかいコーヒーが買えるのは画期的に感じたものです。買うことに何か優越感を感じていたことを覚えています。その後も成長を続け、、飲料自販機だけで2兆円以上の売り上げ(16年時点)を創出しているのですから、メーカー各社にとって欠かせない販売チャネルの一つであることは間違いないでしょう。

 しかし、コロナ禍もあり決済手段が多様化し、硬貨を使わない場面が増えました。スマートフォンだけ持って財布を持ち歩かず、硬貨を持ち合わせていない人も増えています。タッチ決済ができる自販機も多いとはいえ、「商品が大きく変化していない」かつ「割高なのに値上げが続く」飲料自販機では買いたくない、と考える消費者も増えていることは間違いありません。

 1000円と一見高価に見えるヌードルツアーズが人気を博す背景にあるのは「自販機なのに“本物”のラーメンが買える」点です。換言すれば、従来の自販機と明らかに異なる付加価値があるのです。一方の缶コーヒーや清涼飲料を売る自販機は、「利便性」という旧来の自販機利用ニーズ以上の価値を提供できていません。

 今後も値上げをしていくならば、もっとこだわりのある商品開発をする、「自販機専用」のオリジナル商品を数多く開発する、はたまた劇的に安く販売できるようにするなど、飲料自販機のイノベーションが必要でしょう。自販機をこれだけ流通させてきた日本の飲料メーカーも、50年ぶりに自販機商売を見直すべきタイミングです。今後の消費者ニーズに合わせた、新たな自販機を作り出してほしいと思います。

ターリー屋(インドカレー専門店)の自販機(筆者撮影)
「越前かにめし」(1400円)や「おとなの焼き鯖寿司」(1300円)など弁当6種類を扱う(出所:リリース)
崎陽軒の自販機。「おうちで駅弁シリーズ チャーハン弁当」(630円)などを扱う(出所:リリース)
冷凍した商品を扱う「ど冷えもん」(出所:公式Webサイト)
セブン-イレブン・ジャパンの商品をオフィスや工場などで買えるようにした(出所:同社公式ウェブサイト)
早朝や深夜でも花が気軽に購入できる「花の自動販売機」(出所:日比谷花壇公式webサイト)

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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