「ご飯お替わり自由」に続け! やよい軒「無限クーポン」「牛肉フェア」の狙いを探る大戸屋との違いは?(3/3 ページ)

» 2023年08月30日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
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 やよい軒の定食がシンプルに見えるのに対し、大戸屋ではやや凝った印象があるのが特徴だ。味の質も高めとされ、主な定食の価格帯は900〜1200円と、やよい軒よりも200円程度高い。値段の分だけ食材にお金をかけているほか、セントラルキッチン方式ではなく店内調理を基本としている点が品質に寄与しているのだろう。

 一方で、やよい軒のようにご飯を自由にお替わりすることはできない。一部店舗ではお替わり自由のサービスも提供しているが、無料ではなく追加で200円を払う必要がある。あくまで大戸屋では量ではなく、一定の質を求める客をターゲットとしているのだろう。

 ただし、質にこだわった結果、相次ぐ値上げで客離れを招いて業績が悪化してしまった経緯がある。コロワイド(横浜市)の傘下に入った20年以降はセントラルキッチン方式の一部導入や低価格化、男性向けメニューの拡充などを進めていることから、将来的にポジションがやよい軒に近付いていく可能性もあるだろう。

無料で提供している「だし」(同前)

男性客ターゲットの施策を継続か

 やよい軒に話を戻そう。19年2月期から23年2月期の業績は次のように推移している。

売上高(やよい軒事業):312億円→305億円→245億円→254億円→219億円(※)

国内店舗数:377→382→372→371→365(※)

※:23月2月期は上場廃止のため第3四半期までの数字を記載している


 コロナ禍の影響が大きい21年2月期は、特に業績が落ち込んでいることが分かる。その後はある程度の回復を見せているとはいえ、20年2月期を超える水準には至っておらず、伸び悩んでいるようだ。このような状況でやよい軒は今後、どのような戦略をとっていくのか。

 経営権の強化を目的としたMBO(Management BuyOut:経営陣による自社株買収)でプレナスが上場廃止となったため方針の詳細は公表されなくなったが、最近の動きを見ていくと男性客を狙った集客施策が目立つ。7月には唐揚げやフライなどの比較的“重い”メニューを対象にした100円引きクーポン「なんどもパス」を期間限定で配信した。“無限クーポン”として話題にもなっている。

無限クーポン「なんどもパス」キャンペーン(過去に実施、出所:プレスリリース)
「なんどもパス」の対象商品。カロリーが高めな商品が目立つ(出所:同)
「なんどもパス」で価格はどうなったのか

 対象商品には男性客に人気のものが多い。また、焼肉定食やステーキ定食といった肉料理のフェアも随時行っており、950円の「牛カルビ焼肉定食」や1490円の「ミスジステーキ定食」などを提供している。こうした施策はやはり、7割ほどを占める男性客をターゲットにしているのだろう。

7月に開始した「牛肉フェア」(同前)
8月8日から開始した“牛肉フェア”第三弾

 やよい軒の店舗数拡大は既に頭打ち感があり、以前のように高成長を続けるのは難しくなっている。インフレが続いて消費者の懐が寂しくなっている中、出費を抑えつつ満足に食べたい男性客を取り込めるかが今後の業績を左右することだろう。

著者プロフィール

山口伸

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー X(Twitter):@shin_yamaguchi_


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