「日本の小売業は労働生産性水準が低い」と耳にする機会は多い。労働人口の減少や国際情勢、円安による原価の高騰も見過ごせない中、少ないリソースでいかに収益を上げるかは大きな課題と言える。
では、企業が生産性向上を目指す上で欠かせないものは何か? その答えを用意するのがスタディストだ。同社は「生産性向上」を事業の中心に据え、マニュアル作成・共有システム『Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)』のほか多様なソリューションを提供している。どのようにして生産性向上という難題に取り組んでいるのか? キーワードは「オペレーション改善」と「価値強化」だ。
小売業はまさにオペレーショナルな業務が多い業界であり、現場で働く“人”が最も重要な資本となる。それ故、オペレーションに潜む小さなムダが大きな非効率を招き、それが常態化することで企業全体のマイナスにつながりやすい。
しかし逆に、その“ムダ取り”を行い、オペレーション改善を果たせれば多くのリソースを効率的に生かせる上、生まれた余力で「価値強化」に取り組むというサイクルを作れる。そこで目を向けたいのが、デジタルを生かした「本部と現場(店舗)の連携、情報共有の効率化」だ。
話を聞いたのは、現場施策の実行力向上支援システム「ハンクラ」事業部で部長を務める、スタディストの金子隼人氏。同氏は「日本の小売業、特にチェーンオペレーション企業はPDCAを回せていないことが多く、好循環を生み出せていない。それが労働生産性の向上を阻み、コスト上昇を招き、収益が出にくい環境につながっている」と指摘する。
前述した通り、小売業では原価費やエネルギー価格の高騰による影響が深刻だ。「物流業界の2024年問題」により供給力の低下も懸念されている中で、従来通りのやり方では損益分岐点が合わなくなり、収益に影響することは容易に予測できる。
ただ、円安の加速や法規制は一企業で解消できる問題ではない。金子氏は「物流、人件費、原料高によるコストの上昇、オーバーストア化(需要を超えた店舗数の供給)の進行、加えて従業員にとっては可処分所得の減少。これらの要素が重なり、経営が立ち行かなくなる危険性がある」と説く。
こういった前提の下で考えたいのは、従業員がどれだけの付加価値を生み出せるか、具体的には店舗内のどの程度の面積を1人で受け持てるか――つまり労働生産性の向上だ。そのためにはまず、店舗作業における「なくす、減らす、まとめる」を検討する必要がある。
「まずは業務を可視化し、作業時に生じる『迷う、探す、考える』要素を『なくす』。あるいは作業そのものを『減らす』。最終的に必要となる活動事項を『まとめる』。このステップによって本部と店舗、双方にかかっているインプットの負担を減らし、アウトプットの質向上が期待できる。このような作業のコンパクト化はすでに一部企業で取り入れられているが、業界全体を見れば浸透しているとは言い難い」(金子氏)
小売業で「迷う、探す、考える」が生まれやすい代表的な作業が「現場施策の実行」だ。店舗で実行内容に差が出る、本部の指示通りの売り場を作れない――これはチェーンオペレーション企業でよくある課題だと金子氏は話す。主な原因は本部と店舗の連携不足にある。ここで「何がネックになっているのか」を可視化できないと、施策の有効性を計測できないだけでなく、各店舗のバリューも把握しにくくなる。
現場施策は、メールやSNS、グループウェアなどで本部から店舗に指示を出し、展開した売り場写真を店舗から本部に提出して確認を得るのが一般的だ。スーパーバイザー(以下、SV)が店舗を巡回して、売り場を確認しながら必要な指導を行うなどの方法も取られている。
しかし金子氏が言うには「店舗が指示を確認しているか」「指示通りに施策を実行したか」を本部が正確に把握できている例は少ない。こうなると、SVも本社と店舗間のメッセンジャーのような動きが中心となってしまい本来の働きを満たさなくなる。
「店舗は『指示通りに施策を実行できている』と思っていても、本部は『実現率が低い』と感じている――多くのチェーンオペレーション企業ではこのような認識の相違(ズレ)が生じやすい。PDCAのうち“PD”のみ、場合によっては“P”しか実現できていない現実に目を向けて改善することが必要だ」(金子氏)
本部からどのような指示が出ていて、店舗は正しく認識できているのか。そして指示通りに施策を実行できているのか。ここに生じる「迷う、探す、考える」要素をなくし、減らし、まとめた上で、求められる実働の質を上げて評価、効果検証を繰り返すことが非常に重要になる。そのステップの実現に役立つのがハンクラだ。
ハンクラは「可視化の仕組み」そのものであり、施策の確実な実行を補助するのに役立つ。情報伝達や実働のどこで目詰まりが起きているのか、問題点を可視化して原因を特定することで確実な対策を検討し続けること。その結果として、施策の確実な実行を「徹底化」できるサイクルを生み出すこと。これをかなえるのがハンクラであり、導入する最大のメリットになる。
「モバイルアプリをデバイスに入れることで、本部からどのような施策がきているのかを店舗がリアルタイムに確認できるようになる。従来のメールやSNSの場合、店舗は開封後に忘れてしまう、本部は進捗(しんちょく)を追えないといった課題があった。しかしハンクラは、実行結果の報告がアプリに上がるまでリマインドが表示され、店舗から上がってきた実行報告もリアルタイムで追えるためヌケモレなく実働を促せる。実際にある店舗ではリマインドなしのときは平均24%だった実現率が、リマインドありにすると88%まで上昇するなど効果に3倍以上の差が出ることを確認している」(金子氏)
なお、ハンクラはそれ単体でも利用できるツールだが、前述したマニュアル作成・共有システムであるTeachme Bizと併用することも可能だ。Teachme Bizを使えば、ハンクラ経由で店舗に出す施策指示もテキストや写真、動画を使った視覚的に分かりやすい手順書に仕上げられるため「現場施策の実行力をさらに向上させることが可能だ」(金子氏)という。
スタディストの独自調査によると、本部が作成した手順書で一発OK(一度の指示で店舗が正しく施策を実行できた)が出た店舗は全体の50%だったのに対し、Teachme Bizで作成した手順書でのそれは94.7%の実績を示した。効果を実証できていることもあり、ハンクラとTeachme Bizを併用する企業は多い。Teachme Bizによる手順書は改善も容易なので、ハンクラでの実行力向上に加えて作業量の削減にも役立っているという。
ハンクラを用いての施策検知、実働証明、評価はデバイスを数回タップするだけで終えられることも魅力だ。実施終了のエビデンスとなる写真撮影は、動作過程で自動的にカメラが立ち上がるため、店舗が「うっかり忘れる」「後回しにする」ことも防げる。
ハンクラは本部にとっても有益性が高い。金子氏は「本部が思い描いた通りの現場施策を実行できれば、売上は上がる」と力強く語る。小売業には来店客1000人あたりの販売数量を示すPI値と呼ばれる指標があるが、あるスーパーではハンクラ導入後にこのPI値が20%も上昇。特に新製品に対する現場施策には効果を発揮しやすいという。
またハンクラはSVがよりコア業務に集中できる環境づくりにも有効だ。ハンクラを通して集まったデータは全体、あるいは店舗ごとに集計を表示でき、施策の実施や未実施、売り場の完成にかかった日数なども把握できる。金子氏は「この機能は店舗を巡回するSVにも役立つ」と語る。
「各店舗の施策状況を巡回前に把握できていれば、SVは訪れる店舗の優先順位を決定でき、店舗での指導もよりイノベーティブな内容にアップデートできる。数値化しにくい従業員への指導、教育に時間を費やす――これが本来、SVの理想とされる働き方だ。担当エリア内の状況または特色、トレンド商材について情報を伝達する、現場施策に対する建設的な改善案を収集するなど、担当する各店舗がオリジナルのアクションを起こせる環境づくりに努めれば、チェーンオペレーション企業全体の収益向上、経営拡大につながるはずだ」(金子氏)
施策の実行状況の合否判定は基本的に各企業で行うが、あらかじめ条件を提示しておけばスタディストが一部を代行判定することも可能だ。またスタディストには、チェーンオペレーション企業が事業発展を目指せるようにフォローするコーディネーターが所属する。店舗の状況を見て適宜アドバイスを行う、相談に乗るなどしているというから心強い。
参考となる事例としては、スーパーマーケットチェーン大手のイオングループが運営するマックスバリュ(ベトナム店舗)でのハンクラ活用が挙げられる。
同グループは、25年までにベトナムでの100店舗出店を目指しており、以前は現地で一般的なSNSを利用して業務指示や施策実行報告を行っていた。しかし、身近で手軽なツールであるが故にかえって情報が錯綜(さくそう)、混在するようになり、公式情報を明確化する必要に迫られたという。
その状況改善策として導入されたのがハンクラだ。これを機に的確な施策指示と現状把握が可能になっただけではなく、手順書作成にTeachme Bizを併用したことでスムーズかつスピーディーな現場施策が実現。作業時間の削減もかなった。
ハンクラ、Teachme Biz導入がもたらした指示や報告系統の一元化によって業務遂行が円滑になったベトナム店舗は、施策目標値の設定や販促物準備などが半月ほど前倒しで進められるまでに変化したという。
このような成功事例では、前述したコーディネーターの存在も大きい。ハンクラ導入企業の施策レベルや実現率を引き上げる重要要素になっている。
「コーディネーターを通して、当社のナレッジを確実に店舗環境の改善、経営の躍進に結び付けることがハンクラ事業の目標であり、今後はさらに『かゆいところに手が届く』サービスを展開する考えだ。小売業経験者による支援体制が整っている当社の強みを生かしつつ、包括的にフォローアップすることを追求して、顧客企業に貢献していきたい」(金子氏)
金子氏は最後に、小売業――特にチェーンオペレーション企業は現代になくてはならない基幹産業だと強調する。人々の生活にダイレクトに影響する産業だからこそ、多くの外的要因によって収益の向上、安定化が難しくなっている現状を放置すべきではない。
多面的なアプローチで、「お客さまの『生産性向上のパートナー』」を目指すスタディストにはハンクラ、Teachme Bizのほかコンサルティングサービスも充実している。生産性に課題を感じているなら、相談を検討してみてはいかがだろうか。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2023年12月25日