チューナーレスの販売台数や市場規模の詳細は、まだ明らかになっていない。大手家電メーカーも参入しておらず、従来型のテレビと比較して現段階の規模はかなり小さいのだろう。そこで話題性から推測するべく、Google トレンドで「チューナーレステレビ」というワードの人気度を調べた。人気度はピーク時の検索数を100とした際の相対的な数値で表される。
近年の動きを見ると、21年11月までほぼゼロ近辺を推移していたが、同年12月に14となりその後は上昇、22年12月には40となった。そして23年3月にはピークの100を迎える。3月以降は減少に転じたものの、その後は上下を繰り返し、23年12月時点でも57を記録している。注目度から推測するに、今でも売れ続けているのだろう。
検索数が伸び始めた21年末は、ドンキが2種類のチューナーレスを発売したタイミングと重なる。ドンキの発売が話題を呼び、認知度向上につながったのは間違いない。ちなみに同社は19年にもチューナーレスを発売しているが、当時は話題とならなかったようだ。
チューナーレスはドンキの発売をきっかけに注目されるようになったわけだが、その前提として動画配信市場の成長は見逃せない。国内における同市場の規模は18年に2000億円を突破、22年は4530億円と推計され、27年には5670億円にまで伸びる見込みだ。
一方で、リアルタイムにテレビを15分以上視聴する「行為者率」は年々下がっており、ゆるやかだがテレビ離れは進む。このような現状において、各動画視聴サービスの利用者から「従来のスマホやPCではなく大画面で観たい」という需要が現れ、チューナーレスの購入者が増えたと考えられる。
そしてドンキの経緯を見る限り、リニューアルで新製品の音質や画質が向上していることから、高品質を求める声も大きくなっていることが分かる。現在のチューナーレスは従来型のテレビよりも安いものが多く、音質・画質にこだわったハイエンド品は新たな需要を呼び込めそうだ。そう考えると、NHKの受信料と合わせて話題になることが多いチューナーレスだが、あくまでそれは一部に過ぎないのではないか。多くの購入者のニーズはシンプルで、楽に大画面で高品質な動画を見たい点にあると推察できる。チューナーレス市場の今後に注目したい。
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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