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生成AIで新卒採用はどう変わる? 2024年以降に訪れる「3つのフェーズ」(2/2 ページ)

» 2024年02月27日 09時05分 公開
[清水邑ITmedia]
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新卒採用×生成AI 1.0 :学生の生成AI活用への対策が始まる(2023〜24年)

 学生の生成AI活用に、企業がどのような対応を採るかが主な論点になります。具体的には、学生によるES作成への活用です。それによってESの均質化が進めば、選考の意味が薄れてしまいます。企業としては、以下のような対応を採ることが考えられます。

<企業の対応例>

  • 選考過程におけるESのウェイトを下げ、他の選考を上げる
  • ES自体を廃止する
  • ESの評価を生成AIで行う

 最も多く考えられる対応は、選考過程におけるESのウェイトを下げ、他の手段で補う方法です。実際、生成AIが普及する前から、ESの重み付けを比較的軽くしていたり、そもそも設けていなかったりする企業はありました。そうした企業は、適性検査を用いたアセスメントのウェイトを上げたり、ESだけでなくエントリー動画も提出させ、人物像を面接前に確認したりしています。

新卒採用×生成AI 2.0 :文章作成にとどまらず、活用領域が広がる(2024〜25年)

 生成AIの活用は、ESというテキスト領域からさらに広がることが予想されます。企業と学生の双方が生成AIを活用していて当然という段階が来れば、以下のような状況になるでしょう。生成AIの領域が目覚ましいスピードで発展していることを考えると、24年内からこうした動きが見られる可能性もあります。

<学生の動向>

  • 自分用にカスタマイズされた生成AIを活用する
  • 面接のQ&A作成など、企業の考え方に合わせた言語化のサポートを受ける

<企業の動向>

  • ESの新たなフォーマットを開発する
  • 提出されたESを生成AIで解析し、使われているプロンプトを評価に加える
  • ESの代替手段が一般化する

 AIを活用し、採用プロセスのDXに着手する例も登場しています。当社で支援している例では、生成AIの活用を選考プロセスのみにとどめず、面接の品質を定量化したり、面接官の貢献度を見える化したりして、採用プロセスのアップデートや面接官と候補者の適切なマッチングに活用している企業もあります。

新卒採用×生成AI 3.0 :候補者と企業の接点作りの段階にも変化(2025年以降)

 生成AIの活用領域はさらに広がり、候補者と企業の接点作りの段階にまで及ぶと考えられます。歴史を振り返れば、Googleなどの検索エンジンが登場したことで候補者と企業の接点の持ち方は大きく変化してきました。現在ではSNSでの採用ブランディングなどの手法も多くの企業で定着しています。

 こうした変遷を鑑みると、企業の採用ブランディングも、学生側の生成AI活用に対応した方法がスタンダードになり得るでしょう。Googleの検索上位に表示されるためのSEO施策のような、生成AIにピックアップされるための施策が主流となったり、エンジニア採用における実技テストのように、生成AIの活用スキルテストが幅広い職種で課されたりすることが考えられます。


 本記事では、新卒採用における生成AI活用の展望について、3つのフェーズに分けて考えました。テクノロジーの進化は不可逆であることを理解し、採用手法を変え続けられるかが、企業が最適な採用活動を行うためのカギになると言えます。

 23年は日本における「人的資本開示元年」と言われ、経営戦略における「人」の位置付けや各企業の取り組みがあらためて注目されました。採用活動はこの「人」を企業に入れるための試みであり、人手不足の社会的背景も相まってその重要性はますます上がっています。

 こうした状況のサポートため、生成AIの活用を検討している企業は少なくないようですが、個人情報保護委員会が注意を促している(参考リンク:PDF)ように、個人情報保護の観点は非常に重要です。採用活動においては、個人情報を扱う場面が少なくありません。企業は自社のポリシーを策定、順守し、また応募者への情報開示を適切に行うべきで、当面は手探りでの運用になるでしょう。

 人事には個人情報を扱う際の慎重さと、適切な手法を模索、検討して実行する力のどちらもが求められます。

筆者プロフィール:清水 邑

株式会社ZENKIGEN コーポレート本部 人事広報マネージャー/ZEN Career Partners責任者/ZINZIEN コミュニティマネージャー/一般社団法人 人的資本経営推進協会 事務局

2013年、新卒で株式会社イノベーションに入社。BtoBマーケティングを中心としたコンサルタント営業として、同社の上場までの4年間、数百社の顧客支援に携わり同社の成長をけん引。上場後は社長室にてM&A、新規事業開発に従事。

2018年、株式会社ZENKIGENへ第一号社員として入社。数百本の人事系イベントの企画を経て、2020年に ”開かれた人事”を目指す人事コミュニティ「ZINZIEN」のコミュニティーマネージャーに就任。2023年からは、人事広報マネージャーと人材紹介サービス「ZEN Career Partners」(ゼンキャリアパートナーズ)の責任者を務める。


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