競合の業績は堅調なのに…… スノーピークがアウトドア市場で大きく落ち込んでしまった理由(2/3 ページ)

» 2024年03月18日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

長らく続いた成長が途絶えた23年度

 コロナ禍では、アウトドアブームに乗る形でさらに売り上げが増えた。感染拡大が始まった直後こそキャンプ場の閉鎖が相次いだが、“密”を避けられるレジャーとしてアウトドアに注目が集まり、ライト層の参入が相次いだ。19年12月期から23年12月期におけるスノーピークの業績は次の通りである。

売上高(全社):約142億円→約167億円→約257億円→約307億円→約257億円

売上高(ディーラー卸):約49億円→約51億円→約86億円→約98億円→約52億円

※21年度以前のディーラー卸は「EC卸」との合計


 スノーピークの販売形態には(1)直営店、(2)自社EC、(3)インストア、(4)ディーラー卸の4種類がある。直販形態である(1)と(2)はそれぞれ直営店および自社ECでの販売だが、(3)と(4)は卸売だ。(3)はアルペンなど他社スポーツ店に設けたコーナーに自社スタッフを派遣して販売する形態であり、(4)は他社店舗およびECへの販売となっている。コロナ禍では(4)のディーラー卸が著しく伸びた。

 しかし、23年度はディーラー卸が前年比でおよそ半減となり、全社売上高も影響を受けた。ファン層が多いと思われる直営店・自社ECの売り上げは横ばいだが、一般向けが落ち込んだ形だ。22〜23年度で営業利益は約36億円から約9億円に、最終利益は約19億円から100万円と、いずれも激減している。

20年以上続いた成長が23年に途絶えた(出所:同社決算資料)

スノーピークの業績悪化が突出

 スノーピークの業績から、アフターコロナでアウトドア市場自体が縮小したように見えるが、そうではない。矢野経済研究所によると、23年度の「国内アウトドア用品・施設・レンタル市場規模」は約4758億円であり、22年度の約4536億円よりも増えている。24年度は5000億円を超える見込みで、同社によるとアウトドアが身近なレジャーとして定着したことが背景にあるという。

 他社の業績も堅調に推移している。スノーピークの卸売先でもあるアルペンの業績を見ると22年6月期および23年6月期の「アウトドア」売上高はそれぞれ約294億円→約305億円である。直近で発表があった24年6月期第2四半期を前年同期と比較すると、今期は約155億円に対して前年同期は約166億円。6%強の減少だが、スノーピークほどではない。

 同様に、スポーツ用品店をチェーン展開するヒマラヤの業績を見ても、22年8月期、23年8月期におけるアウトドア商品の売上高は約107億円→約102億円と推移しており、微減に過ぎない。

 アウトドアメーカーも、自社ブランド「GOLDWIN」の他に「THE NORTH FACE」など他社ブランドの製造販売を担うゴールドウインは好調だ。アウトドア関連を含む「パフォーマンス」「ライフスタイル」の両事業区分の売上高を見ると、24年3月期第3四半期はそれぞれ約313億円、約560億円であり、いずれも前年同期を上回っている。

 こうした競合のデータを見ると、スノーピークの業績悪化は突出していることが分かるだろう。

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