横浜銘菓「ハーバー」荒波を乗り越え70周年 航跡を関係者の証言から振り返る(1/4 ページ)

» 2024年05月02日 18時11分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 横浜銘菓の「横濱ハーバー」が今年8月、発売70周年を迎える。製造会社の倒産で一時、姿を消したが、後継で名乗りを上げた「ありあけ」(横浜市中区)の藤木久三会長(82)は息子の交通事故死などによる自身の失意とハーバーの状況を重ね合わせながら復活に力を注いだ。販路拡大に動いた営業担当、味の改良に取り組んだ菓子職人…。荒波を乗り越えてきたハーバーの航跡を関係者の証言から振り返る。

photo 藤沢市にあるハーバーの製造工場

涙と拍手で迎えられた復活

 「ありがとう」。23年前、そう言って手を握ってきた女性を藤木氏は今も忘れられない。平成13年4月26日、横浜市中区の横浜松坂屋(当時)の店頭で約2年ぶりにハーバーを販売し、チラシを配っているとき、女性が話しかけてきた。学生時代に入院した際に母が「元気になる」とハーバーを差し入れてくれた思い出を語り、「母も亡くなり、ハーバーもなくなり、悲しかった」。復活に感謝し、涙を流した。

 他の買い物客からも「待っていた」と拍手で迎えられ、数日分と見込んでいた個数が一気に売れた。藤木氏は「お菓子には人を感動させる力があり、感動創造業であるという思いを強くした」と語る。

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