「消せるボールペン」は全世界44億本販売 海外で爆発的な人気を誇る日本製文具の品質(2/3 ページ)

» 2024年05月26日 09時47分 公開
[産経新聞]
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色鮮やかで高い速乾性

 海外で注目を集めるのは、例えば鮮やかな発色やさまざまな素材に書けるのが魅力の水性サインペン「POSCA(ポスカ)」だ。手がける三菱鉛筆の広報担当者は「アート(美術)・クラフト(工芸)市場で需要が伸びている」と話す。同社ではポスカ以外にも北米で水性ボールペンなどの支持も厚い。

 同社の売上高に占める海外の割合は年々拡大している。円安の影響もあり、令和5年12月期の売上高748億円のうち、海外は395億円と前期比2.6ポイント上昇の53.5%を占め、海外比率は過去最大となった。

 一方、同社は老舗文具メーカー大手の独ラミー社(ハイデルベルク)を今年3月に完全子会社化した。欧州中心に海外市場の拡大を狙い、ラミー社が主力とする万年筆の技術を取り込む。

 約70年に及ぶ海外展開の歴史を有するぺんてる(東京都中央区)も欧米などで20の販売会社と5工場を拠点に事業を展開。「日本ではクレヨンや絵の具の印象が強い当社だが、海外の販売実績ではボールペンやマーカー、シャープペンの占める割合が高い」(広報担当者)という。

 同社の海外売上高比率は令和4年度で約7割。今後さらに伸びるとみており、「新興国地域である中国、インド、中南米などの成長を促進していく」と意気込む。

 ぺんてるにおける海外での稼ぎ頭は、何といってもボールペン「エナージェル」だ。平成13年に発売し、世界120以上の国・地域で展開。年々販売を伸ばしており、全世界累計販売本数は令和5年9月時点で12億本を超えた。

 「エナージェル」はペン先からインキが吐き出されると同時に、ゲル状からすばやく液体に変わる「ゲルインキ」を採用し、滑らかで鮮やかな書き味を実現している。

 インキの速乾性も海外で爆発的な人気を集めた大きな要因だ。欧州などで国によっては日本より左利きの人口の割合が高く、左から右へ書いてもすぐに乾くためインキで袖口や書類が汚れないことが受けているという。

 パイロットコーポレーションも、書いた字をこすると消える特殊なインキを用いたボールペンなどの「フリクション」シリーズが世界的なヒット商品に。令和5年末時点で累計44億本を販売している。米国ではゲルインキボールペン「G―2(ジーツー)」の販売を伸ばしている。

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