「手の模型」になぜ3億円も集まった? 誕生の裏に、一流クリエイターの悩みテストマーケティングから見るプロダクトの近未来(2/2 ページ)

» 2024年07月24日 08時00分 公開
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クリエイターによるクリエイターのための商品

 本商品のメインターゲットは、漫画家やイラストレーター、デザイナーなどのプロやセミプロのクリエイター層です。開発のきっかけとなったのは『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』などの作画を手掛けたことで知られるアニメーター・加々美高浩さんと、壽屋のトップ造形師である白髭創さんの存在です。

 従来のハンドモデルは木製のものが主流ですが、人間の手が持つ複雑かつ柔軟な可動域を表現するのは困難でした。白髭さん自身がクリエイターとして既存の商品に不満を持っていたことから、本商品の着想が生まれました。

 開発段階では「手」の描写において高い評価を受ける加々美さんが監修。白髭さんと両氏のアイデアを織り交ぜながら、20カ所の関節や親指の付け根の関節可動域など、クリエイターにしか分からないようなニーズを満たす商品が実現しました。

 同プロジェクトはSNSで大きな反響を呼び、第1弾の「右手」は1万3000人以上のサポーターから、1億4800万円の応援購入が集まりました。応援コメント欄やSNSでは、クリエイターたちを中心に「待っていました」という声が寄せられ、「左手が欲しい」「足が欲しい」といった新たなニーズも次々と生まれました。

ファンの声を受け「左手」も登場

 これらの要望を受け、第2弾として「左手」のハンドモデルも開発され、右手を上回る1億5000万円以上の応援購入が集まりました。

日常生活の中にも大ヒット商品を生み出すヒントがある

 クリエイターには、いわゆる共通の仕事観や価値観を持ったコミュニティーが存在しています。トップクリエイターである加々美さんが監修したことで、SNS上のクリエイターの目にとまり、本商品のプロジェクトは大きく拡散されました。実際の購入属性を見ると、クリエイター業で生計を立てる30代の男女が中心だったことからも、特定のコミュニティーに深く響いたことがうかがえます。

 世の中には商品があふれていて、あらゆるニーズを満たしているように思いがちです。今回はクリエイターの事例ですが、身近な日常生活においても、実は満足できずに妥協している商品は存在しているのではないでしょうか。ビジネスパーソンとしての視点、生活者としての視点を行き来させることで、まだ見つけられていない商品のニーズが見つかるかもしれません。

著者プロフィール:松岡宏治

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株式会社マクアケ プロジェクト推進本部 執行役員

1992年生まれ。2015年早稲田大学卒業後、ITベンチャー企業を経て、2016年に株式会社マクアケへジョイン。マクアケ関西支社二人目の社員として、立ち上げに参画し事業拡大に貢献。その後福岡、名古屋、広島、金沢に拠点を立ち上げ、全地方拠点の管轄を務める。現在は東京本社でプロジェクト推進本部全体の管轄をしつつ、自らも各地方へ足を運んでいる。過去、国内メーカーのプロジェクトを中心に2000件以上のプロジェクトを担当。

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