しまむらグループのベビー・子ども用品専門店「バースデイ」は7月30日、現代美術家・加賀美健氏とのコラボ商品の販売を中止した。
同月29日に発売したTシャツやアクセサリーに「ママがいい」「パパはいつも寝てる」「パパはいつも帰り遅い」「パパは全然面倒みてくれない」などとデザインされた商品があり、物議を醸していた。SNSで、これらの文言が「お父さんに差別的」「子育てに熱心な男性に失礼」などといった批判が相次いでいたという。
こうしたXなどでの炎上を火消しするために、慌てて販売を取り止めた感がある。
一方で、これらの文言で表現されていることは「よくあることではないか」といった、擁護論もあった。
加賀美氏というと、ウィットに富んだ文言が入ったアイテムが人気で、バースデイでは2023年よりコラボ商品を販売していた。
しまむらはイメージ的に、キャラクター商品も含めて、よく言えばコンサバな商品を売るショップだ。大衆商品が多く、エキセントリックな要素を含む「加賀美健」コラボ商品は例外的といえるが、シリーズ化されていたのだから好評だったのだろう。
加賀美氏はアートの領域を越境し、アパレル界でも売れっ子なので、コラボ商品が各社から多数発売されている。例えば、アパレル大手アダストリアの主力ブランド「ニコアンド」からもコラボ商品が売られているほどだ。
しまむらとしては、「加賀美健」コラボ商品がマニアックでなく、ポピュラーになったものと判断して参入したと思われる。冒険的な商品を出すのはもちろん悪いことではない。
しかし、大人向けになら「辛口」として面白がられてきた加賀美氏のウイットが、ベビー・子ども用となると尖り過ぎていたので、父親たちの感情を逆なでするのではないかと感じる人も多かったようだ。
今回の加賀美氏コラボ商品騒動に関する投稿を見ていると、「バースデイのユーザーや加賀美ファンがどれだけ書き込んでいるのか?」と疑問を抱く。
バースデイのユーザーや加賀美ファンが苦言を呈するのならともかく、もともと興味がなかったブランドの商品で、不快に感じた表現があったのであれば、単にこれまでどおり買わなければ良いだけではないのか。
「見たくない権利」の主張は、憲法で保障されている表現の自由の範囲を狭める可能性がある。また、画一的な面白みのないデザインへと向かわせるので、危険だと思うのである。百人百様、人によって不快に感じるツボは異なっている。消費者から苦情が寄せられたものを次々と排除したら、何も販売できなくなってしまう。
今回は、バースデイが加賀美氏とコラボした商品が販売中止になった件について考えてみたい。
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