なぜ、スシローは「デジタル」な寿司を回すのか くら寿司はエンタメ性の高い店舗にこだわり 戦略の違いを考察する(2/3 ページ)

» 2024年08月24日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

エンタメも交えてファミリー狙いのくら、本格高級志向のスシロー

 リアル回転寿司にこだわるくら寿司は子ども受けを狙い、ファミリー層をターゲットにした施策が目立つ。各テーブルに設置する「ビッくらポン!」は5皿に1回、景品が当たるチャンスが得られるゲームで、休日は子どもが楽しんでいるのをよく見かける。各アニメとのコラボ企画も随時実施しており、コロナ禍で実施した『鬼滅の刃』とのコラボは映画の大ヒットとも相まって業績をけん引した。

くら寿司、東京・銀座のグローバル旗艦店(編集部撮影、以下同)

 近年ではインバウンド向けの施策も目立つ。東京の浅草や原宿、大阪・道頓堀などで展開する「グローバル旗艦店」は通常店と異なり、白木を使った和の内装が特徴だ。観光と食事を同時に体験できる「サイトイーティング」を標ぼうし、日本文化の発信拠点と位置付けている。4月にオープンした銀座店では、団子や天ぷらの屋台を設置し、縁日の夜を演出するなど工夫している。くら寿司によると、グローバル旗艦店のインバウンド比率はおよそ5割だという。

銀座の店内には寿司を握る屋台がある
屋台で寿司を握るパフォーマンス

 対するスシローは、くら寿司ほどエンタメ性を訴求していない印象だ。子ども受けを狙ったとみられる揚げ物やデザートのサイドメニューもくら寿司と比較して少なく、一方で純粋に握りを楽しみたい客層を狙った商品構成である。「サーモン・いか」のように1皿で2貫楽しめる商品や、「いか梅しそにぎり」「漬けごま活〆真鯛」のようにやや凝ったような商品が目立つ。

 握りは皿ごとに価格が3段階へと分かれており、最も高い黒皿は260〜290円だ。ほとんどの握りを200円以下に抑えているくら寿司よりも高付加価値品が多い。価格が品質に反映されているのか、アンケートやSNSでもスシローの寿司ネタを評価する意見が多い。

 ちなみにスシローは養殖魚の比率を現在の35%から将来的に50%へと高める計画を立てており、2022年には養殖事業を手掛ける拓洋と共同で、養殖子会社のマリンバースを設立した。日本の漁獲量が年々減少していく中、市場外流通で調達できる養殖魚で仕入れの安定化を狙う。

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