カーライル傘下に入った日本KFCは今後、どう生まれ変わるのだろうか。日本法人であるカーライル・ジャパンは2000年に設立し、以降は国内でバイアウト投資を行ってきた。バイアウト投資とは、ある企業を買収して改革し、企業価値を高めてから売却することで利ざやを得る投資方法のことだ。公式Webサイトによると、カーライルではこれまで日本で約40社、4500億円を超える投資を行ってきたという。
具体例を挙げると2009年に居酒屋「はなの舞」で知られるチムニーに出資してMBOを支援し、2012年に再上場させた。この間の差額で100億円弱の利益を得たと言われる。チムニーの改革では会計や食材在庫の徹底管理、調理技術の向上など、突飛な施策ではなく基礎を固める施策を行った。
2019年には野村ホールディングスと共同で沖縄のオリオンビールを買収し、現在は将来的な上場を目指して改革を行っている。オリオンビールはカーライル傘下でECサイトのリニューアルや海外販路の強化を進めたほか、倉庫の効率化やシェアオフィス活用による東京支社の閉鎖といった地味な取り組みも行った。米ファンドと聞くと手荒い印象もあるが、カーライルは一見すると当たり前のような施策で傘下企業の改革を進めてきたのだ。
カーライルは、日本KFCについても同様に、企業価値を高めてから再上場を目指すことになるだろう。現在の課題を解決する形で改革が進みそうだ。
日本KFCが抱える課題の一つがDXの遅れである。競合であるマクドナルドは無人オーダー機やセルフレジを積極的に導入。特にモバイルオーダーの定着化は店舗の効率化につながった。対する日本KFCは遅れている印象がある。業態こそ違うが、松屋は券売機を設置したセルフ式店舗を展開、すき家・吉野家も後に続く。人手不足の昨今、こうした施策は急務になるだろう。日本KFCは以前よりセルフ式店舗を増やしているが、今後加速するかもしれない。
もう一つの課題が「ランチ以外の利用が少ない」点だ。ケンタランチの導入で日常利用を進めたとはいえ、店舗によって夜は閑散としていることが多い。「朝マック」「夜マック」など、メニュー構成に緩急をつけるマクドナルドとは対照的である。
営業時間にも差が現れており、マクドナルドは早朝や深夜営業を行う店舗もある一方、日本KFCの多くは午前10時〜午後9時の営業である。夕方のカフェ利用に関しても「マックカフェ」を提供するマクドナルドに対し、ケンタッキーのイメージは薄い。人手不足で深夜時間の拡張は難しいが、朝利用や夕方のカフェ利用を開拓する余地はあるだろう。サイドメニューの甘いものは今のところ「チョコパイ」と「ビスケット」しかなく、スイーツ関連が増えていく可能性も高い。
買収完了後、カーライルは店舗のデジタル化やメニューの拡充を進め、積極的な出店戦略を実行するとしている。地道な施策でどう企業価値を高めるのか、今後の動向に注目したい。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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