日本人は世界で最も不安感を持つ民族だといわれている。そのため、人の行き来が多いメイン通路を背にして業務に集中するのは難しいのではないだろうか。ある什器メーカーの調査によると、無人のオフィスでは、まず隅から席が埋まるという。それくらい、囲われているほうが安心できる日本人にとって、オープンオフィスは多少なりとも、落ち着かない。
現在、いろいろなオフィスを取材する中で筆者が「日本人らしさ」を感じるのは、囲われ感のあるオフィスだ。カーテンで囲ったり、先の観葉植物で囲ったりする。間仕切りやパーテーションを立てると圧迫感があるが、カーテンやグリーン、あるいは可動式のホワイトボードで、ほんのりと囲う。ブロック塀ではなく生垣で囲う、そんなイメージである。
日本人は、昔からの居住空間において、ほのかに囲う生活をしてきたゆえに、がっちり囲わなくとも、意識としては囲われているという安心感を覚える。この囲われ感は、欧米のオフィスには反映されている様子はあまり見られない。日本人特有の感性と考えてよさそうだ。
次に、「その人らしさ」である。ABW(Activity Based Working:その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方)の定着は、オフィス内での業務をする場所の選択肢を増やした。集中ブース、ミーティングスペース、リフレッシュスペースなど、目的に合わせた選択が可能だ。業務場所は機能面が重視されがちだが、感性を切り捨ててはいけない。
個室ブース一つ取っても、全て同一のものではなく、デザインや色、メーカーを変える。ミーティングスペースも、さまざまな什器や色、感性の世界の違いを選択肢の中に取り入れる。同じ機能のスペースであっても、デザインが異なる。
私のお気に入りの、テレフォンブース、私のお気に入りのミーティングスペース。そのような機能と感性を掛け合わせた選択肢を増やしている。私のお気に入りの場所が、結果、行きたくなるオフィスにつながるのではないだろうか。
次は「部門らしさ」、つまり部門(チーム)に最適化されたオフィスである。それぞれ専門性を持った部門やチームに自社の成長に貢献したいと思ってもらう必要がある。
各チームはそれぞれ固有性を持つ。ミッションが異なれば、当然仕事の仕方が異なり、働き方も異なるからだ。だとしたら、全てのメンバーが同一の働き方ではないだろうし、当然、働く場も異なるはずである。フリーアドレスが適しているチームもあれば、固定席が適しているチームもあるだろう。
つまり、チームごとに求められるミッションを把握して、そのミッションを達成しやすいオフィスを構築すべきだ。それぞれのチームがミッションを達成することは、企業の成長につながる。部門らしさは企業成長を支える要素になり得る。画一的なオフィスはありえないと思う所以(ゆえん)である。
最後に「企業らしさ」だが、部門らしさ同様に、会社の成長に影響を及ぼすと筆者は考えている。オフィスは企業成長の加速装置だ。どう企業らしさを落とし込むか。コーポレートカラーをふんだんに使うのか、企業ロゴを数多く掲示するのか。あるいは、過去の歴史を振り返るスペースを作る、歴代の製品を展示する、いままでつながれたDNAに触れる場を創る──。
企業文化の醸成と強化、それをオフィスに反映させていくことが、総務部門における最上位の仕事の一つでもあるのではないか。
株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)IT顧問化協会 専務理事/日本オムニチャネル協会 フェロー
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)IT顧問化協会 専務理事/日本オムニチャネル協会 フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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