人材不足の状況下で、多くの企業が採用に力を入れるのと並行して、リテンション(優秀人材の流出防止)にも注力するようになってきました。
リテンションを考える際に重要なキーワードの1つが「もったいない離職」です。もったいない離職とは、従業員が現在の会社・職場にいる意味が見つかる可能性があるにもかかわらず、早期に見切りを付けて辞めてしまうことです。
中には人事やマネジャーからすると「そんなことで?」と耳を疑いたくなるようなことを、従業員が真剣に悩んでしまい、退職につながってしまうケースも含まれます。
そこで、もったいない離職を防ぐ1on1コミュニケーションの工夫について、全2回の記事でお伝えします。この前編では、もったいない離職や1on1について簡単に説明した上で、1on1コミュニケーションの工夫の全体像を紹介します。
ある日突然、従業員から「辞めることにしました」と言われ驚いた──人事やマネジャーの皆さんには、そんな経験が一度や二度はあるはずです。
「どうして?」と詳しく話を聴いてみると「え、そんなことで?」と思うような、ちょっとした出来事が原因になっていることがよくあります。コミュニケーションの小さな行き違いや誤解が原因になっていることも少なくありません。本稿では近年、増加しているこうしたケースをもったいない離職と定義し、考えていきましょう。
もったいない離職は、次のようなメカニズムで起こります。
最初のきっかけは「ちょっとした出来事」です。ある業務がうまくできなかった、上司の一言を誤解してネガティブに受け取った、先輩の業務の引き継ぎが丁寧でなかった、職場内に少し苦手な人がいる……そのようなささいなことが発端になります。
もちろん、こうした出来事がいつも離職につながるわけではありません。ちょっとした出来事がもったいない離職につながってしまうケースには共通点があります。それは、従業員が「自分の悩みや不安や不満を誰にも相談できない状況にある」ことです。
たとえささいな悩みや不安や不満であっても、誰にも相談できないままだと、本人のなかだけで思い込みや決めつけが進み、どんどん膨らんでいってしまいます。最終的に「私はこの仕事を続けるべきじゃない」という独断的な結論にたどり着いたとき、もったいない離職が起こるのです。
以上の話を踏まえると、もったいない離職を防ぐ方法は明らかです。最も大事なのは、従業員を「独りで悩んだまま」にさせないことです。上司や周囲が、部下のささいな悩みや不安や不満に早い時点で気付けたら、もったいない離職はまず起きないのです。
そのための手段の一つとして、上司と部下が1on1を通じて、日常的によくコミュニケーションを取ることが大切です。週1回から月1回ほどの頻度で、定期的に上司が部下の現状を聞き、その内容にフィードバックしていくことで、部下の成長を促します。
リクルートマネジメントソリューションズの「1on1ミーティング導入の実態調査」では、一般企業の約7割がすでに1on1を導入しており、当たり前の施策になりつつあります。
1on1は、既存の人事評価面談とは性質が大きく異なります。人事評価面談は上司が部下を管理する傾向が強い場ですが、1on1はあくまでも「部下のための面談」です。1on1の主役は上司ではなく、部下なのです。
定期的な1on1を通じて、部下が感じていることや悩み・不安・不満などを思う存分話してもらいましょう。そうすれば、多くのもったいない離職が予防できる可能性は高まります。
さらに1on1を通じて、上司が部下全員に目配り・気配りをして、一人一人への期待を明確にして伝え、その頑張りをよく見て認めることができれば、各自のモチベーションが向上し、職場の雰囲気も良くなることでしょう。
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