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OpenAI CEOが2025年の「到来」を予測する、AGIとは? 孫正義氏やイーロン・マスク氏も発言

» 2024年11月19日 08時30分 公開
[湯川鶴章、エクサウィザーズ AI新聞編集長]
ExaWizards

 OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は、米シリコンバレーのスタートアップ支援組織として有名なY Combinatorが運営するYouTubeチャンネルの最新動画「How To Build The Future: Sam Altman」の中で、「AGI(汎用人工知能)が(2025年にくる)」と発言した。

サム・アルトマン氏は、2025年にAGIが到来するとの予測を示した(画像:ゲッティイメージズより)

 同氏がAGIの実現する時期を公の場で明言したのは初めてとみられる。AGI実現を2年から数年と予測する意見が多い中で、同氏の予測は、実現時期が最も早い予測となった。

 AGIは、人間のように広範なタスクを理解し遂行する能力を持つAIであり、その実現は科学技術だけでなく社会全体に多大な影響を与えると予測されている。もしアルトマン氏の予測通りにAGIが2025年に実現した場合、社会への影響は計り知れない。自動運転、医療診断、クリエイティブな創作活動など、さまざまな分野でのAIの応用がさらに進むだろう。

 しかし一方で、労働市場への影響や倫理的な課題も懸念されている。AGIがもたらす利便性とリスクのバランスをどう取るか、私たちはいま一層深く考える必要がある。

 同氏のこの発言は、Y Combinatorのチャンネルの中の最新動画「How To Build The Future: Sam Altman」の中で飛び出した。アルトマン氏はOpenAIを創業する前にY Combinatorの代表を務めていたこともあり、インタビューアである現在のY CombinatorのCEOであるギャリー・タン氏とは旧知の仲。

 和やかな雰囲気の中、インタビューは、アルトマン氏が大学生のときにY Combinatorに入った経緯や、Y Combinatorでの活動を通じてOpenAIを設立した当時の裏話を中心に約40分ほど続いた。

 インタビューをまとめる形でタン氏が「What are you excited about in 2025? What’s to come?(2025年に、あなたは何に興奮していますか? 何がくるのでしょうか?)」と質問したところ、アルトマン氏は「AGI. Excited for that (AGIですね。AGIに興奮しています」と答えた。会話はその後、アルトマン氏の子どもの話に移行。2025年にAGIが実現するというアルトマン氏の予測を深く掘り下げることはなかった。

 ソフトバンクの孫正義氏は、AGIの実現時期について、2023年10月のSoftBank Worldでは今後10年以内と語っていたものの、2024年のSoftBank Worldでは2、3年以内と予測を前倒しした。

 一方、イーロン・マスク氏は以前、2029年と予測していたが、最近のインタビューでは「来年、もしくは2年以内」と発言。彼もまた予測を前倒ししている。

 そんな中、AI基盤モデルの開発で先頭を走るOpenAIのCEOであるアルトマン氏が、AGIの実現時期を2025年と明言したことになるわけで、この発言が今後大きな話題となりそうだ。

 AGIの定義には実はいろいろなものがある。これまでも特定の分野で人間の能力を超えるAIは存在した。そうしたAIと対比する意味で、あらゆる分野で人間に劣ることのないAIという意味で、AGI、汎用人工知能という表現が使われるようになった。また全ての人間に劣ることがないという意味で、ノーベル賞受賞者レベルの知能を持つようになればAGIであるという定義もある。

 一方でOpenAIは、ほとんどの経済的に価値のある作業で人間を上回る自律システム、と定義している。

 2024年10月1日に開催された開発者向けイベント「OpenAI Dev Day」でアルトマン氏は「今までのAIモデルはAGIではないとはっきりと明言できた。でも(9月12日にリリースした最新AIモデル「OpenAI o1」で、かなりいいところまでできてきた。多分AGIと呼ぶには2、3の重要な機能が欠けているように思うが、それでもあと一歩のところまできている。次の段階で、びっくりするくらい能力が向上し、多くの人はこれこそがAGIだと思うようになるかもしれない」と語っている。

 AGIが2025年に実現するということは、欠けていた2、3の重要な機能の実現の目処がたったということなのだろうか。われわれは急激な社会変化の入り口に立っているのかもしれない。

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「2025年、AGIが到来?OpenAI CEOが予測」(2024年11月11日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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