セブン-イレブンが低価格を売りにした商品を続々と展開しています。今まで低価格商品をあまり投入していなかった弁当でも300円台のものが次々と登場し、注目されています。
昨今、何かと物価高が話題になる時代。メーカー各社の値上げも続いていますが、そんな中で、なぜセブンは低価格商品を開発し、投入しているのでしょうか。消費トレンドを追いかけ、小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上にわたり続けているムガマエ代表の岩崎剛幸が分析していきます。
セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が、北米を中心にコンビニを展開するカナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)社から買収提案を受けているとの報道が、話題を呼んでいます。そして、セブン&アイが創業家の資産管理会社・伊藤興業からMBO(経営陣による企業買収)提案を受けているとの報道も出ています。
セブンはこれからどうなってしまうのか、と気になる人も多いでしょう。しかし、当のセブンは淡々と、自社のやるべきことを進めています。中でも目立つのが「うれしい値!宣言」です。
2024年度第2四半期の実績で、セブンの3〜9月累計は客数が前年比99.9%、売り上げも同99.8%(いずれも既存店)となりました。直近の9月度は客数が同100.6%と前年を超えたものの、3月時点では客数98.7%、売り上げで99.8%と今期は厳しい状況でのスタートでした。2023年9月以降は客数の伸びが鈍化しており、売り上げに影響しています。
セブンは2023年、消費者1万人を対象にしたアンケート調査を実施し、自社を含めた小売業に対するさまざまな声を集めました。業態・競合の値ごろ感に関する設問では、割高に感じる業態の1位がコンビニで、63.9%の消費者がコンビニは高いと感じていることが分かっています。2位のフードデリバリー(55.3%)、3位のホームセンター(14.1%)と比較し、コンビニの割高感はダントツなようです。
セブンに関する項目では「やや割高に感じる」「非常に割高に感じる」の合計が、2021年の33.9%と比較して38.0%で、4.1ポイント増加していました。今やセブンは、日本の各種業態を通じて「最も割高な店」の一つだと認識されているのです。
ファミリーマートの調査でも、消費者の節約志向が高まり、クーポンやセール、キャンペーンを意識して店選びをするようになったという結果がでています。消費者の買い方の変化がここからも見て取れます。
物価高が続き、昨今は大きく生活コストが上昇しています。実質賃金は6月に27カ月ぶりのプラスへと転じましたが、8月には再びマイナスに。消費者の生活実態はいまだ不透明な状況にあり、先行きが分からない不安から節約志向はますます強まっていくでしょう。
だからこそセブンは消費者の節約志向に対応し、自社に抱く割高なイメージを覆して客数アップの引き金にしようと「うれしい値!宣言」を仕掛けたのです。
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