ロボット、自動運転車、ドローンが、お互いの位置から「最もちょうどいい場所」を計算して待ち合わせし、物流網をつなでいく──そんな異なるモビリティ間の「協調配送」を、KDDIなど5社が実現させようとしている。
建物の中で荷物を配送するのに適した配送ロボットから、公道を走行でき積載量が比較的多い自動運転車に荷物を受け渡す。自動運転車が配送を進める上で、走行に時間がかかる山間部や、災害時に道がふさがってしまった際などには、ドローンにバトンタッチ。空路でラストワンマイルをカバーする……といった活用法を想定する。
「将来的にはロボット、自動運転車、ドローンを使って全自動配送を実現したい」と同社担当者が表明する今回の取り組み。どのような技術で、何を可能にするのか? 12月6日に報道公開された実証実験の様子をお届けする。
ロボットや自動運転車、ドローンは本来、それぞれ位置情報のデータ形式が異なるが、各方式を変換し、同一のプラットフォームで扱えるようにした。これによって「どこで待ち合わせると最も効率的か」を計算したり、より高精度で互いの位置を協調させ、荷物を受け渡しやすいよう近くに停止させたりといったことが可能になる。
「それぞれ(のモビリティ)が適したところで協調させることによって、効率的な配送を実現するというのが、今回の研究開発のコンセプト」だと、KDDIの樫原俊太郎氏(先端技術研究本部 応用技術研究1部 エキスパート)は話す。
最適な経路を計算をする上で、配送のスピードやコスト、消費電力、安全性など、重視するべき観点は複数ある。どの指標を条件として最適化させるかを指定すれば、異なるルートを算出可能だ。「建物から一定の距離を取って走行する」「通信ネットワークの品質が良いところを通る」など、さまざまな条件を織り込んで、数十秒程度で最適なルートをはじき出す。
今回の実証実験は、廃校舎をドローン講習などに活用している施設「コードベースキミツ」(千葉県君津市)で行われた。
配送ロボットは、配送元拠点に見立てた教室から校舎の外へと動き、自動運転車と合流。ドア近くで停止し、人が荷物を積み替える。
自動運転車はドローンとの合流地点に向かい、荷物を移し替えられたドローンは山の向こうの配送先に飛ぶ。
なお、軽トラックなどの荷台からドローンが飛び立つという活用法を想定し、自動運転車が引くけん引車からドローンが飛ぶ実験は2023年に成功している。今回は会場の都合上、ドローンが停止している地点に自動運転車が向かう形を取った。
同社は実用化によって「労働力不足への対応」が期待できるとしている。通信技術面では実現できるレベルに達しているが、実装に向けた障壁は残る。完全自動運転や、ドローンの飛行可能区域に関する法令面の問題も存在する。
また、モビリティ間の荷物の受け渡しは、現状は人が行っている。消費者への配送を想定した場合、物流現場の業務削減にはつながるものの、完全自動運転による省人化につながるのかは疑問が残る。ただし、例えば製造業における事業者間の配送であれば、各拠点の人手が対応できるため、導入は比較的容易と考えられる。
同社は2030年までをめどに全自動運転を目指すとし、受け渡しのハード面の仕組みについては、技術力のある他事業者などと連携したいとしている。
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