一方でサイゼは異色ともいえる方法でDXを進めてきた。
注文に際しては、2020年に「手書きオーダー」制を導入。料理名を店員に伝える従来の手法から、客が注文用紙にメニュー番号を記入し、店員が読み上げて確認する手法へと切り替えた。店員は手持ちのデジタル端末に番号を入力し、注文を取る。
一見するとあまり効率化できていない印象だが、店員がテーブルに滞留する時間が短くなり、効果があったという。料理名を読み上げる時間を短縮できた他、注文しながら料理を選ぶ行為を省くことができたためだ。
その後、深刻化する人手不足を受けて、2023年からはQRコードを用いたスマホ注文方式へと切り替えを進めている。既に400店舗で導入し、2025年8月までに全店導入を目指す。
スマホ注文方式は、客が自分のスマホで席のQRコードを読み取ると、注文画面を表示する仕組みだ。注文には4ケタのメニュー番号を入力するフローで、客は紙のメニューで番号を見る必要がある。その後、数量を選択して注文を確定する。つまり、客の作業と簡素なアプリを組み合わせた“半DX”の施策といえる。
今やスマホ注文は、居酒屋などで既に標準化しつつある。ただ、サイゼの注文方式は、注文画面に料理の写真を表示しない点がユニークだ。タッチパネル注文でもなく、写真も表示しない仕様にした理由は、やはりコスト削減の徹底だろう。
飲食店が用いるタブレット端末は安いもので4万円台。20万円以上の製品もある。1店舗当たり120席、少なく見積もってテーブル数を40とすると、全国1040店舗(11月末時点)でタブレットを導入するのに少なくとも15億円以上が必要である。モバイルオーダーでも、初期投資額が1店舗で10万円以上することがある。画面の簡素さからも伝わるようにサイゼの注文方式にお金がかかっていないのは明白だ。
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