サイゼでは配膳ロボについて、すかいらーくHDほど普及していない印象だ。試験導入は開始しているものの、店員が配膳する店舗が多い。社長が配膳ロボに対して否定的な発言もしており、従来通り人に頼る方針に戻ったとみられる。
サイゼの店員はテキパキ動く印象を受けるが、それもそのはずである。時速5キロ以上の速度で歩くよう指示されており、皿の持ち手も細かくマニュアル化している。優秀な店員をそろえている手前、配膳ロボの効果は少ないのではないか。
また、サイゼは調理工程もできるだけ削減しているため、キッチンが比較的狭い。ホールが一般的なファミレスより狭い店舗も多く、配膳ロボを導入するスペースが少ないことも、導入へのハードルになっていると考えられる。
コスト面を考えると、配膳ロボの初期投資額はばく大だ。すかいらーくHDでは、2022年末にガストが全国約2100店舗、3000台の配膳ロボを導入。仮に1台300万円とすると、ロボットだけで90億円にもなる。2021年6月に新株発行で調達した428億円を、この配膳ロボやレジの刷新、セルフレジなどへの投資に充てている。
このように他社がDXを進める中、サイゼは一部に限って取り組みを進めてきた。注文では簡素なシステムによる取り組みを進めているが、配膳は依然として人に頼っている状況だ。一方、支払いは8月にセルフレジの全店導入を完了した。店員を介する従来の会計は1組当たり平均80秒であり、こうした作業から店員を解放する効果は明らかである。
DXと聞けば、見栄えの良いロボットやアプリの導入が思い浮かぶが、サイゼのDXは最小限。同社の徹底したコスト削減の姿勢が現れており、学ぶところも多いだろう。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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