PdMの需要が高まる中、単に募集を行うだけでは優秀な人材を確保するのが難しくなっており、戦略的な採用活動が重要です。近年、求職者の転職理由やニーズは多様化しており、企業は転職を検討する求職者の具体的なニーズを理解し、それに応えることが求められています。
では、PdM職を希望する求職者は実際にどのようなニーズを持っているのでしょうか。以下に具体例を挙げてご紹介いたします。
・事例1:他事業とのシナジーを生み出すプロダクト開発
あるSaaS企業でPdMを担当している方は、これまでのWeb事業にとどまらず、非Web事業との連携を模索していました。現在は「他事業とのシナジーを生み出し、新たなプロダクトを開発したい」という思いから、プロダクト開発をリードするポジションを求めて転職活動を行っております。
・事例2:業界の枠を超えた新たなプロダクト開発
あるPdM候補の方は「製造業とテクノロジーを融合させ、社会的影響の大きいプロダクトを生み出したい」と考え、業界の枠を越えて新たな挑戦を検討していました。その結果、業界横断的な視点で新しい挑戦を求め、IT企業から製造業への転職を決意しました。
・事例3:エンジニアからPdMへのキャリアシフト
エンジニアとしてキャリアを積んできたある方は「技術に特化するのではなく、プロダクト全体を俯瞰(ふかん)し、上流工程での意思決定に関わりたい」と考え、PdMへの転職を決意しました。技術的なバックグラウンドを生かしながら、プロダクト開発の戦略面にも関与し、現在もPdMとして活躍されています。
・事例4:PdMとしての幅広い視野を持ちたい
ある元マーケティング担当者は、プロダクト開発の最前線に立つためにPdMを目指していました。「プロダクトの開発過程において『何を』作るかだけでなく、『なぜ』それを作るのか、そして『どのように』実現するのか」といった全体的な視点で関わりたいという思いが転職の理由でした。
このように、PdM職を希望する求職者の中でも、自身のキャリアの方向性や関わりたい事業領域についてさまざまなニーズがあります。企業は多様なニーズを把握し、それぞれのニーズにあった魅力の打ち出し方をしていく必要があるといえるでしょう。
PdMの不足は、多くの企業にとって喫緊の課題です。優秀なPdMの獲得競争は激化しており、事業成長のボトルネックとなるケースも少なくありません。
PdM不足に直面する中、効果的な対策として注目されているのが「非PdM人材のPdMとしての採用・育成」です。PdM経験者に固執するのではなく、社内外の未経験者やポテンシャル人材に目を向けることで、新たな可能性を探ることができます。
では、なぜ非PdM人材の活用が有効なのでしょうか。
転職市場におけるPdM経験者の数は限られていますが、エンジニア、デザイナー、マーケター、カスタマーサクセス、プロジェクトマネージャーなど、他職種で活躍する人材の中にはPdMとしての素養を持つ人材も多く存在すると考えられます。
例えば、エンジニア経験を持つPdMは技術的な知見を生かして実現性の高いプロダクト開発を推進でき、カスタマーサクセス出身のPdMは顧客理解を基にユーザーに寄り添ったプロダクトを創出することが期待できます。他の職種で培った経験やスキルを活用することで、多角的な視点や専門知識をプロダクト開発に取り入れられ、プロダクト開発に新たな視点と価値をもたらすといえるのではないでしょうか。
PdM未経験者を採用する際に最も重要なのは「どういったPdMが欲しいのか/PdMに何を任せたいのか」を明確にすることです。やみくもに未経験者を採用するのではなく、自社の課題と目指すべき姿を具体的に定義することで、必要なスキルや素養を持つ人材を確保できるといえるでしょう。
最期に、具体的な成功事例として、ある企業の取り組みを紹介します。
この企業はPdM不足に悩んでいましたが、単純にPdM経験者を採用するのではなく、まず採用したいPdMのペルソナを詳細に分解しました。その結果、現状の組織の問題は「企画担当者や現存のPdMの開発知見が弱く、開発の実現可能性や工数を意識した企画ができていない点」という課題を明確化しました。
この課題に基づき、彼らはPdM経験の有無ではなく、「開発知見が強く、企画方面にキャリアを形成していきたいエンジニアやプロジェクトマネージャー」を新たな採用ターゲットとしました。その結果、開発経験豊富で企画力も磨きたいと考えていたエンジニアを採用することに成功し、PdMとして育成することで、開発視点を取り入れた現実的なプロダクト企画を実現できるようになりました。
このように、自社の課題を正確に把握し、必要なスキルを持つ人材をPdM未経験者の中から選定・育成することで、PdM不足という困難を乗り越えることができます。PdM経験者に固執せず、社内外の未経験者に目を向けることで、新たな可能性が開けるだけでなく、組織全体のスキル向上や活性化にもつながるでしょう。
PdMの採用は単なる人材確保にとどまらず、企業全体の成長と競争力向上に直結する重要なテーマです。未来を見据えた戦略的なアプローチを通じて、優秀なPdMの確保と育成を進めていく必要があるでしょう。
企業がエンジニア採用に苦戦する中、増える「文系出身エンジニア」 採用のコツは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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