自治体DX最前線

自治体職員は必見 悪質な仕様書をChatGPTで見破る方法【プロンプト例あり】(2/2 ページ)

» 2025年01月27日 07時00分 公開
[川口弘行ITmedia]
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ChatGPTを使って仕様書のワナを見破る方法

 では、提供された機能要件の中で事業者が仕掛けたワナを見破って、公正な調達環境を維持させつつ適切なシステムやサービスを手に入れるにはどうしたらいいのでしょうか? ここで生成AIを活用してはどうだろうか、というのが私の提案です。

 誤解のないように付言しておきますが、私自身は事業者から参考情報として仕様書案をもらうこと自体を否定しません。逆に事業者の協力を得ずに、職員が独りよがりの仕様書を作成すると、理想だけが高くなってしまい、現実的にどの事業者からも応札を得られない、という可能性もあります。

 したがって、応札可能性を高めつつ、公平性・中立性を確保した仕様の決定を職員の負担をかけずに行っていく必要があるのです。

 公共調達のルールの中では、これを実現する手法として、RFI(情報提供依頼)あるいは資料招請と呼ばれる手続きがあります。

 RFIの詳細は別の機会に解説しますが、要は複数の事業者に対して同じ条件でシステムやサービスに関する仕様書のアイディアをもらうというものです。ポイントは「複数者から」「同じ条件で」情報の提供を受けることです。実際、法令違反の疑いが生じるのは、特定の事業者からのみ情報提供を受けているという場合であり、必ず複数の事業者から応札が得られる調達環境を作っていくことが必要です。

 また、複数の事業者から情報を得るためには、事業者ごとに異なる条件を提示することは避けるべきです。条件の提示を恣意的に行うことは、特定の事業者に極端に有利な状況を作ることにつながります。そのため、RFIは必ず「書面」で行う必要があります。

 さて、適正な手法でRFIを実施し、複数の事業者から参考となる情報を得られたとしましょう。ここからChatGPTを使います。

 ChatGPTの有料版(ChatGPT PlusやChatGPT Team)では、文書ファイルを直接読み込ませて、その内容に基づいて指示を出すことができます。そこで、複数の参考情報(仕様書案)をChatGPTにドラッグ&ドロップして、次のようなプロンプトで問い合わせます。

プロンプト

# 背景

アップロードしたファイルは、自治体の財務会計システムの機能要件に関する情報です。

これらの情報から最終的には、機能要件を整理した表を作りたいです。

最終的な表の項目は、

* 大項目

* 中項目

* 小項目(機能名)

* 機能の説明

* 利用者

* 必須/提案の別

* その機能が求められる目的

です。

# 今回の指示

最終的な表を作成する前に、アップロードしたファイルから、「大項目」に相当する内容を抽出、整理し、一覧として表示してください。

提供された情報から「大項目」を抽出

 さらに、抽出された大項目ごとに中項目、小項目(機能名)を抽出して、一覧にしていきます。

プロンプト

では、それぞれの大項目ごとに、「中項目」に相当する内容を抽出、整理し、大項目とともに一覧として表示してください。

大項目ごとに「中項目」を抽出

プロンプト

では、それぞれの大項目、中項目ごとに、「小項目(機能名)」に相当する内容を抽出、整理し、大項目、中項目とともに一覧として表示してください。

中項目ごとに「小項目(機能名)」を抽出

 このような感じで、抽出された機能名に対して、機能の説明、利用者、必須/提案の別、その機能が求められる目的を問い合わせていくことで、複数の提供情報を踏まえた中立的な機能要件を整理することができます。小規模なシステムの場合は、大項目、中項目で分類せずに、いきなり機能を列記して整理しても良よいかもしれません。

 なお、最終的な参考見積もりを各事業者からもらう前には、改めて複数事業者に2回目のRFIを実施し、過剰な機能、不足している機能について意見をもらうとよいでしょう。

 次回は、自治体における生成AIの活用事例として、引き続き調達事務の改善についてご紹介したいと思います。事業者を選定する手法の一つである「プロポーザル型事業者選定」を実効性の高いものにするためにどうすればいいのかを一緒に考えていきましょう。

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