長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
吉野家ホールディングス(HD)が、牛丼以外にカレー、から揚げ、ラーメンなどのブランド育成を本格化している。2024年12月には、東京・浅草に、カレー専門店「もう〜とりこ」1号店をオープン。インバウンドの観光客も多い場所だ。同月には、横浜市にから揚げとおにぎりの専門店「でいから」の1号店もオープンしている。
いずれも吉野家の跡地であり、カレーは都市型、から揚げは郊外ロードサイド型とそれぞれ異なる立地でスタートした。カレーとから揚げは、ともに吉野家で提供しているメニューだが、専門店ではさらにブラッシュアップして、ブランディングしている。
広報によれば、「いずれも、順調なスタートを切っている」とのこと。まだオープンしたばかりだが、実際に訪問した感想としても同様の印象を持った。
吉野家HDは2024年12月に、京都の鶏白湯ラーメン店「キラメキノトリ」などを運営する、キラメキノ未来も買収。傘下のスターティングオーバーでも、同月に肉あんかけ炒飯専門店「炒王」と、カレーうどん専門店「千吉」、親子丼など鶏料理専門店「鶏千」の3業態複合店を、千葉県佐倉市にオープン。はなまるも1月に本社を創業の地である香川・高松に移すなど、新たな動きが多い。
吉野家HDの担当者は「ホールディングスで進めたわけでなく、たまたま傘下の各社がほぼ時を同じくして、新しいチャレンジを行った」とのこと。牛丼依存からの脱却が急務と、全社的に危機感が共有されている表れのように見える。強固なブランド力を持つ牛丼のパイオニア、吉野家HDに何が起きているのか。取材した。
吉野家HDの2025年2月期第3四半期決算は、売上高が1517億5100万円(前年同期比9.3%増)、経常利益が62億5600万円(同4.8%減)で、売り上げ自体は好調だ。にもかかわらず減益となっており、営業利益も前年同期比で7.0%減。
セグメント別では、吉野家の売上高は、1021億900万円(同9.2%増)、利益が57億900万円(同2.8%減)。主力の吉野家ですら増収減益の状況だ。2024年7月に牛丼(並盛)の価格を店内飲食で468円から498円に値上げしたが、売り上げ面では影響を受けてないようだ。一方で減益となったのは、顧客離れを恐れてワンコイン以内に収める値上げにとどめため、コスト高を吸収しきれなかった可能性が高い。
「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
15年ぶり大規模出店の「吉野家」 2つの店舗スタイルで女性層を取り込めるかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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