山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
国内の家電量販店市場は、既に成長が止まっている。家電出荷額は横ばいに推移しており、業界トップのヤマダホールディングス(HD)も、2010年度の2兆1532億円をピークに売上高が減少に転じ、2024年3月期の売上高は1兆5920億円となった。
家電販売で成長が見込めなくなったいま、大型量販店を構える各社が進めているのが「デパート化」である。家具売場や酒類売場を設け、中には食品スーパーを併設する店舗も多い。今回はヤマダ、ヨドバシ、ビックなど、各社が進めるデパート化施策をまとめていく。
ヤマダHDは1992年の大規模小売店舗法改正後に大型店舗の出店を加速し、地方を中心に勢力を伸ばしてきた。2001年には家電量販店として売り上げが業界トップとなり、2010年度にピークの2.1兆円となった。だが市場規模としては既に頭打ちとなり、減少に転じた。
同社は業績が悪化する中で多角化を進めてきた。2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化し、2016年には住宅ローン貸付の子会社を設立。2019年に大塚家具を子会社化した際は話題を呼んだ。
住宅関連の強化によって、店舗にも特徴が現れている。系列で店舗数が最も多い「テックランド」では、ニトリのように椅子やテーブル、寝具などの家具を取りそろえるコーナーがある。リフォームコーナーがある店舗では、キッチン設備も充実している。店舗数が縮小しているが、2017年から家具販売に力を入れる「家電住まいる館」の出店も進めてきた。
2021年からは、既存店を増築・増床する形で大型店「LIFE SELECT」の出店を進めて、2024年9月末時点で33店舗を展開する。もともと2007年に都市型店舗「LABI」としてオープンした池袋店は基本的に家電が多いものの、地下2階に薬局があるほか、5階の家具フロアには大塚家具ブランドの製品も取りそろえている。
このように同社は家具をそろえて「非家電」を強化し、店舗のデパート化を進めてきた。家具店はニトリを筆頭に都市部より郊外を主戦場にするチェーンが多く、郊外立地に強みを持つヤマダならではの施策といえる。
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