同社は頑なに値上げしない方針を貫いている。安さを売りにしているからだろう。サイゼリヤの味はスタンダードで、特段味が特徴的でもない。値上げをすれば、客が離れる可能性は確かにある。
価格を維持しているにもかかわらず、客単価は上昇し、2020年8月期の741円から、2024年8月期には822円へと上昇した。他社が値上げを進める中でサイゼリヤの安さが目立ち、高単価な飲酒客などが流入したことも背景にあると考えられる。「割安感が目立ったことで、追加メニューを注文しやすくなった」と分析する意見もある。
値上げせずに戦えるのは、徹底的にコスト削減策を進めてきたからだ。2020年に「手書きオーダー」制を導入。客が口頭で注文する方式から、手書きメモを渡す方式へと切り替えた。コロナ禍での感染防止対策という名目だが、店員を呼んでから料理を選ぶ行為を防止し、効率化の目的もあったとされる。
現在はQRコードを使ったスマホ注文方式を始め、2025年8月までの全店導入を進めている。一部店舗では配膳ロボットもみられる。
メニュー改定では新商品の追加もあるため認識しにくいが、長期ではメニューの絞り込みを行ってきた。およそ30年前、1997年のメニューと現在のものと比較すると、差は明らかだ。
サラダメニューは「肉サラダ」や「生ハムサラダ」がなくなって8種類から3種類に減少。4種類あったグラタンは現在、1種類しかない。3種類あったステーキも消滅した。
スパゲッティやピザなどイタリア料理の数は、全体として大きく変わっていない。しかし、内容面で変化がみられる。
近年提供していた「パンチェッタのピザ」や「アンチョビとルーコラのピザ」は現在無くなっている。パスタの大盛りも2022年12月に終了した。
2023年には秋のメニュー改定に合わせ、通常メニューを141から101品目に大幅削減した。現在のメニューブックでは「よく一緒に注文されているメニュー」欄を追加し、メニューが減ったことで隙間が増えたように見せない工夫がうかがえる。
珍しい商品も、徐々に姿を消している。カントッチョや「真イカのパプリカソース」といった独特のメニューが姿を消しており、飲食業界関係者は次のように話す。
「サイゼリヤは効率化のために特徴的な料理を減らしてきました。以前は低価格目当ての客以外に、イタリアンを楽しむ客層が多かったのですが、現在は減ってしまいました。もはや純粋に料理を楽しむ客層をターゲットにしていないかもしれません」
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