リテール大革命

「店舗体験」こそ文具ビジネスの核――デジタル全盛の今、日本製の文具が米国で支持されるワケRetail Dive(2/3 ページ)

» 2025年04月09日 10時30分 公開
[Dani JamesITmedia]
Retail Dive

インディーズ勢の台頭

 英ロンドン発の文具ブランドPapierは、2023年に米国で初めての卸売パートナー契約をAnthropologie(アンソロポロジー)と結んだ。

 「直販(DTC)が今も売り上げとトラフィックの大半を占めているが、卸売も急速に成長しており、今後さらに重要なビジネスとなると見ている」と、創業者兼CEOのテイムール・アティゲチ氏は語る。

 同社ではプランナーや日記帳が主力製品であり、レシピ帳やフォトブックも人気がある。英国発のブランドでありながら、顧客の多くは米国在住だという。

 「私たちはデジタル社会におけるアナログの価値を理解し、それに共鳴する現代の消費者に向けたブランドを築いてきた」と同社は述べている。「画面から離れ、デジタルから解放されたいという欲求が高まっており、私たちの商品は、美しく触感に訴えるオフライン体験を提供している」

「店舗体験」こそ文具ビジネスの核

 米バージニア州アレクサンドリアでRed Barn Mercantile(レッド・バーン・マーカンタイル)を経営するエイミー・ラザフォード氏は、文具商品の売り上げが「とにかく成長し続けた」と語る。

 この流れを受けて、彼女は同地域に文具専門店Penny Post(ペニーポスト)を新たに開業した。

 ラザフォード氏は、文具への関心の一部は「メンタルヘルス」とも関係していると指摘する。例えば、日記をつけるといった行為は、スクリーンから離れ、自分自身を見つめ直す時間を作ることであり、自己表現の一種でもある。彼女の店舗で取り扱う文具ブランドの多くは、視覚的にユニークで、時には政治的メッセージを含んだ商品を展開している。

Penny Postのような独立系文具小売業者は、大手小売業者がつまずいているにもかかわらず、専門商品に対する消費者の関心を利用して利益を上げている(Retail Dive)

 カリフォルニア州を拠点とする文具ブランド兼小売業者Shorthand(ショートハンド)も、同一都市内に複数の店舗を展開しつつ、売り上げを食い合うことなくビジネスを成長させている。

 創業者兼オーナーであるロザンナ・クヴェルモ氏によれば、「店舗体験」こそが文具ビジネスの核であるという。顧客は紙の手触りやペンの書き心地にこだわる人が多く、実際に体験できる場が重視されている。Shorthandの一部店舗には印刷工房が併設されており、製品が作られる様子を見学できる。また、同社のメール登録は今も「アナログ方式」で行っており、店内に設置された紙とペンで顧客が自ら記入するスタイルを貫いている。

 「オンラインでは商品があふれすぎていて混乱することがあるけれど、実店舗では同じ種類の製品が3つほどに厳選され、すでに品質も担保されている」(クヴェルモ氏)

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