米国においてステーショナリー文化が新しいわけではないが、今回の取材に応じた多くの小売業者は、日本をはじめとする国々には古くから文具文化が根付いていると述べている。
「ドイツや日本では、国内製造を維持するための取り組みが一貫して行われてきた」と、米ミズーリ州セントルイスにあるSt. Louis Art Supply(セントルイス・アート・サプライ)のプロダクトディレクター、カーソン・モネッティ氏は語る。
「これらの国々は伝統的に輸出型経済であり、『良い製品を作る』ということに合意形成がある。政府と企業が連携し、製造プロセスの洗練、労働者の訓練、複雑なサプライチェーンの構築を何世代にもわたって続けてきた。米国ではそうした努力がなされてこなかったため、技術が失われてしまった」
「われわれが海外から調達している多くの製品には、米国内に代替品が存在しない。そのため、価格上昇分を顧客に転嫁せざるを得ない」とも述べている。
米国の多くの小規模店舗は、こうした海外製品を取り扱うために特定の国からの輸入を積極的に行っている。それでもなお、国内で幅広い文具製品を手に入れるのは難しいとモネッティ氏は指摘する。特に日本製文具の品質は際立って高い。
「日本では地元企業間の競争が激しく、価格が抑えられている。しかも日本の消費者は米国以上に文具を使い、品質への要求も高い。だからこそ、日本の大手文具メーカーは今でも毎シーズン新製品を投入し、トレンドを牽引し、競い合っている。米国の多くのブランドが停滞しているなか、これは新鮮で刺激的だ」
ドナルド・トランプ大統領が発表した新たな関税政策により、米国の多くの文具企業に影響が及ぶ可能性が出てきた。完成品の輸入だけでなく、原材料やパッケージ素材にも関税がかかるからだ。
「われわれは米国内でFederal Color(フェデラルカラー)というブランドの水彩絵の具やインクを製造している小規模メーカーでもあるが、その製造でも原材料や包装資材の調達は世界各国に依存しており、関税導入によって価格を引き上げざるを得ない」とモネッティ氏は説明している。
一方、グラフィックデザイナー出身のスアン・ソン氏が立ち上げた文具ブランドAppointed(アポインテッド)は、米国内で高品質なノートを作るというビジョンを掲げてスタートした。彼女は、性別を問わず使える、シンプルで時代に左右されないデザインの文具が米国では手に入りづらいと感じていた。
約10年を経た今でも、同ブランドの主力商品は当初からのノートであり、製品ラインは大きく拡充している。
Appointedブランドは設立当初から「メイド・イン・USA」の基準を守ることにこだわってきた。ソン氏はこう語る。「品質管理がしやすく、小ロット生産にも対応できる。米国内で調達すれば納期も早いという実利的な理由だった」
ただし、この姿勢には多大な労力も伴う。例えば、人気商品の「タスクプランナー」は、月ごとのタブ付きで構成されているが、初期には社員たちが手作業でページを一つ一つ並べていたという。
「米国でタブ付きのプランナーを作っている企業はほとんどない。なぜなら、そのための専用機械が非常に高価だから」とソン氏は語る。
幸いにもオレゴン州に、年間数台だけ機械を製造している小規模企業があり、Appointedの仕様を満たす設備を見つけることができた。
「その機械を買うために5万ドルの事業融資を受けた。これは私たちのビジネスを大きく変えた。良いプランナーを使うと、それをリピート購入する人が増え、さらにその人が周囲に薦めてくれる。年を追うごとに自然と成長が続いているのは、そのおかげだと思う」
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