2025年の幕開け前から、専門家たちは今年の人事領域における最重要トピックとして「職場におけるAI活用」と「DEI(多様性・公平性・包括性)の未来」を挙げていた。
そして年が進む中で、従業員は日々、自分の時間・注意力・価値観をめぐって葛藤している。AIによる業務の自動化や機械学習の進展への不安、あるいは従業員リソースグループ(ある特定の性質を持つ従業員の組織)や文化的な祝祭の今後について、政治的な緊張感が高まる中での懸念が続いている。
職場文化や士気を超えて、DEIやAIに対する企業の姿勢は、採用から定着、育成、退職に至るまでの「タレント・ライフサイクル」に深く影響を与える。
テクノロジー導入が適切でない場合、従業員からの信頼を損ねる要因になり得る。一方で、DEIの重要性を軽視すれば、優秀で多様な人材が離れていく可能性があると、研究者たちは警鐘を鳴らしている。
人的資本の扱いが企業成長の命運を分ける重要な時代にもかかわらず、実際には人事部門はそうした重要な意思決定の場から排除されていることが多い。しかも人事部門は、最終的に定められた方針の実行責任を負わされる立場にある。
このような構造の問題は、ドイツのLeapsomeの調査レポートにも表れている。同レポートでは、出社回帰を巡る議論が「特に対立的である」とし、
という実態が明らかになった。つまり、現場での実感と経営判断との間に大きな乖離(かいり)が存在していることが示されている。
さらに、2024年の米McLean & Companyの報告書では、AI戦略の立案においても人事部門と経営幹部の協働が不可欠であると強調されている。
「AI技術の導入は、組織内に緊張を生む可能性があります。意見の相違や優先順位の衝突、大量の変化が同時に発生するからです」と、McLean&Companyの人事テクノロジーおよびAI部門プリンシパルディレクター、リサ・ハイフィールド氏は述べている。
その上でハイフィールド氏は「AIの導入と管理には、部門を横断した協働的なアプローチが極めて有効です」と強調している。
一方で、DEI分野は依然として不安定な状態にある。
2025年初頭以降、多くのフォーチュン500企業(米経済誌『フォーチュン』が年に1度発表する、全米企業の総収入上位500社のリスト)がDEI施策から距離を置き始めており、連邦政府の方針転換の影響もあってDEIに関連するコンプライアンスの難易度は上昇している。
こうしたAI活用の加速とDEI後退という二重の変化の中で、専門家たちは「人事部門は、戦略決定の場に戦略的パートナーとして参加すべきである」と指摘する。
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