リテール大革命

コンビニ市場でも覇者狙う 小売最大手ウォルマートの独自性と強みは?Retail Dive

» 2025年04月29日 09時00分 公開
[Brett DworskiITmedia]
Retail Dive

 Walmart(ウォルマート)と聞いて、手頃な価格のガソリンを思い浮かべる消費者はおそらく少ないだろう。しかし、数十年にわたってスーパセンター(大型総合小売店)網を築いてきた米国最大のディスカウント小売業者は、今やコンビニエンスストア市場でも存在感を高めようとしている。

 長年にわたり、Walmartに隣接するガソリンスタンドとコンビニは「マーフィーUSA」(Murphy USA)が運営してきた。このパートナーシップにより、Walmartの駐車場近くに1000店舗以上のマーフィー運営コンビニが誕生した。しかし、2016年にマーフィーがWalmartとの成長戦略を分離し、それぞれが独自に店舗展開を進める道を選んだことで状況は一変した。

 「Walmartはもともと独自に燃料ビジネスを手掛ける計画はなかった」と、同社の燃料・コンビニエンス担当バイスプレジデントであるデイブ・デセリオ(Dave DeSerio)氏は語る。しかし、マーフィーとの分離からほどなくして、インフレによる消費者の負担増に対応する手段として、再び燃料ビジネスに参入する決断を下したという。

 「具体的な戦略があったわけではない。ただ、われわれの駐車場においても顧客にサービスを提供できることは分かっていた」とデセリオ氏は振り返る。

 その後、成長は着実に進んだ。Walmartは2024年末に400店舗目のガソリンスタンドをオープンし、さらに2025年末までに全米で約450店舗に拡大する計画を明らかにしている。

 この目標を達成すれば、店舗数ベースで米国のコンビニチェーン上位20社に名を連ねることになる。潤沢な資金力を背景に、他のコンビニ事業者では実現が難しいスピードと規模で、Walmartのコンビニ事業が拡大する可能性がある。

Walmartは2024年後半に400番目のガソリンスタンドをオープン。2025年末までに全国で約450カ所に拡大する計画を明らかにした(Retail Dive)

ウォルマート流・新コンビニ戦略

 Walmartは約10年前、コンビニ事業に参入して最初の1年でおよそ100店舗を一気に展開したとデセリオ氏は説明する。しかし、同社はすぐに出店ペースを落とし、各店舗のパフォーマンスや顧客ニーズの分析に注力した。

 こうした一時的な立ち止まりと再評価が、これまでWalmartのコンビニ・燃料事業に関する話題が控えめだった理由だという。

 「意図的に静かに進めてきた。これはわれわれにとって新たな事業であり、学ぶ必要があった」とデセリオ氏は語る。「ここ数年、その事業をどのようにWalmartのエコシステムに組み込むかを慎重に考える時間とした」

 この再評価を経て、Walmartは現在のコンビニ戦略を構築した。

 デセリオ氏によれば、これらの店舗のうち1店舗を除き、全てがWalmartの大型店舗の駐車場内に立地している。コンビニとはいえ、実態はスーパセンターのミニチュア版に近く、ガソリン販売も手掛けるのが特徴だ。そのコンビニでは、ポテトチップス1袋でもワイパー液1ガロンまで、隣接する大型店と同じ価格で販売している。

 考え方自体はシンプルだが、それでもデセリオ氏にとっては、コンビニ事業へのアプローチを根本から見直すきっかけとなった。デセリオ氏は、2018年にWalmartに入社する以前、ワワ(Wawa)、マプコ(MAPCO)、スピンクス(Spinx)といった大手コンビニチェーンで数十年にわたり上級幹部を務めた経験を持つ。

 Walmartが掲げる「エブリデイ・ロープライス」(毎日低価格)戦略は、燃料と商品を顧客に提供する上で「まったく異なるアプローチ」を求めるものだったとデセリオ氏は振り返る。

 「スーパセンターでチョコレートバーを買った場合と、コンビニで時間短縮のために同じ商品を購入した場合、その価格が変わらないことを顧客に知ってもらいたい」と、デセリオ氏は語る。「この考え方を受け入れ、それを強みに変えるために、自分の考え方自体を再訓練しなければならなかった」

Walmartはコンビニ事業に参入した直後、出店ペースを落としパフォーマンスや顧客ニーズの分析に注力した(引用:Walmart)

現在の課題は?

 Walmartのガソリンスタンド拡大は、同社の会員制プログラム「Walmart+」の成長とも連動している。2020年に開始した「Walmart+」は、さまざまなサービスや割引を提供しており、Walmartのコンビニでガソリンを1ガロンあたり10セント引きで購入できる特典も含まれている。

 現在の課題の一つは、コンビニ事業において顧客のロイヤルティを構築し、長年利用してきた競合ガソリンスタンドではなく、Walmartの店舗を選んでもらうことだとデセリオ氏は説明する。

 「この業界は昔から存在している。そんな中でどうやって独自性を打ち出すのか? どうやって存在感を示すのか? どうやって顧客の信頼を勝ち取るのか?」と問いかけた。

コンビニ事業、ウォルマートの強みは?

 2025年4月時点で、Walmartのコンビニは全米34州に展開している。ガソリンスタンド展開における重点地域について、デセリオ氏は「運営難易度や建設コストにかかわらず、全ての市場を検討している」と答えた。

 目標は、Walmartが運営する全ての駐車場で燃料販売を最大化することにあるという。「確かに高い目標だ。しかし、全米に広がる当社の不動産資産を考えれば、この事業がどこまで成長できるか、数の面で限界はないと考えている」とデセリオ氏は自信を見せた。

 さらにデセリオ氏は、Walmartの百貨店で提供する「エブリデイ・ロープライス」という価値提案が、ガソリンと菓子を求めて立ち寄る消費者にも響くと期待を寄せている。

 「価格の変動が消費者の生活に与える影響は大きい。だからこそ、燃料や便利な商品の提供を通じて、われわれの既存の価値提案をさらに拡張できる絶好の機会だと捉えている」

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