この記事は『わたしたちのエンゲージメント実践書』(株式会社アトラエ Wevoxチーム著、田中信著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
1965年に創業、社員数はグループ全体で1万6000人を超える、日本を代表するコンサルティング、IT ソリューション企業の野村総合研究所(NRI)。同社では、2020年度より全社的なエンゲージメント向上活動がスタートし「働きがい共創」をキーワードに、社内コミュニティ活動、各事業部での推進委員の設置など、精力的に活動を行っています。
エンゲージメント推進委員の1人として活動する横山さんは、チームリーダーを務める傍らで、エンゲージメント向上活動に取り組んでいます。
最初は関心が薄かったエンゲージメントという考え方に強く引かれていったという横山さんに、「活動の価値の伝え方」について語っていただきました。
2008年新卒入社。プログラム開発、システム運用、社内支援、金融業界のシステム基盤開発・運用などを担当したのち、現部署にてクラウドサービスの企画・運営を担当。設計構築リーダーとして約10人のチームを運営している。
2022年4月よりネットワークサービスマネジメント部全体のエンゲージメント活動を推進する委員会のメンバーとなり、計3人のコアメンバーで推進活動を行っている。※取材時(2023年8月)の部署です。
課題:規模が大きい組織での体制をどうすればいいか
学び:トップダウンとボトムアップを組み合わせる体制づくり
課題:職場での活動を何からスタートすればいいか分からない
学び:エンゲージメント活動へのスタンスの共有と、チームのありたい姿を考える
課題::推進者として長く活動に関わるためのスタンスや心構えは?
学び:自分自身のエンゲージメントと向き合う、エンゲージメント活動で自分が生き生きするときを考える
――横山さんがエンゲージメント向上活動の推進委員になったきっかけは?
私がエンゲージメント推進活動を始めたきっかけは、部署にエンゲージメント向上委員会が設置されたときに、部長から委員会メンバーに任命されたことです。そのため、エンゲージメント向上活動に対して特別強い意思があったわけではなく、エンゲージメントを学ぶアカデミーにも、流れで参画したというのが正直なところです。
ただ、そのアカデミーで出会った仲間や講師のみなさんに恵まれて、今では積極的に自身の経験を発信するようになりました。
――NRIは規模が大きい企業です。エンゲージメント向上活動はどのような構造になっているのでしょうか?
次の図はNRIの体制図です。社長の配下にある一つ一つの細長い四角は事業部門で、お客さまの業界や、クラウドサービスのような機能ごとの単位で組織しています。人材開発部が主導する本社機構が現場の横断的な取り組みや管理サポートの役割を担っています。
本社機構によるトップダウンは、会社・組織全体としての方向性を示すことができるのが強みですが、それぞれの現場で温度感や規模感にばらつきがあるので、現場レベルのエンゲージメント向上活動も行われています。
現場のボトムアップでは、小さな組織単位に合った活動や、一人一人の価値観に寄り添うことができるので、エンゲージメント向上活動を自分ごととして扱える人を増やしていくためには必要な活動だと思います。本社機構での全体施策があることで、現場メンバーの活動がサポートされています。
――2020年からエンゲージメント向上活動がスタートしています。自らも現場で働く推進委員という立場から見た、活動継続のポイントを教えてください。
まず、私たちにとって、エンゲージメント向上活動は一体どんな活動なのかについて考えるとき、デレク・シヴァーズさんの「社会運動はどうやって起こすか」というTEDの講演動画がとても参考になります。最初に1人が踊り出すと、初めは冷笑されますが、そのうち一緒に踊ってくれる人が現れます。ポイントなのは、初めから踊っている人と、一緒に踊り出したフォロワーを対等に取り扱うことです。
エンゲージメント向上活動も同じで、皆さんが最初に活動を始めたときというのは組織の中で踊っている状態なんですね。エンゲージメントと向き合う中で大切なのは、皆さんが踊っている中で勇気を出してくれた初めのフォロワーを大切にして、対等に取り扱うということです。
こうしたエンゲージメント向上活動に対する基本スタンスを明確にした上で、継続する次のポイントは、「自分たちの部署が何をするチームなのかを最初に明らかにする」ことです。私たちはグループではなくチームです。
会社などの組織ごとに目的があるはずですので、その認識をそろえていかなくてはいけません。その上で、自分の部署がどういう役割で何に貢献しているのか、それぞれの業務は自分の意欲や感情をどう満たしてくれるのかを見つめ直すと、なんとなく今の仕事の意味が見えてくるものです。言語化が難しい場合は、絵や写真で表現してみてもいいと思います。
――それぞれのチームにおける「ありたい姿」を考えていくということですね。理想像を描いたあとは?
理想像が描けたら、次は「なぜエンゲージメントを向上させようとしているのか」を考えてみます。私の場合だと、会社の企業理念や経営ビジョンを私たちの業務にあった言葉に落とし込んでいきます。
当社のコーポレート・ステートメントは「Dream up the future. 未来創発」です。このステートメントから、例えば、私が所属する部署のミッションに落とし込んだとき、その中身からキーワードを抜き出すと、「新しい価値を提供したい」「複雑な問題を解決したい」が実現したいことでした。
そのためには、学習し続ける組織になり、客観視を磨いて信頼関係を築くことができる、つまり健全な意見のぶつけ合いができる環境にしていく必要があります。そうすると必然的に、私たちがエンゲージメントを向上させて獲得したいものは何なのかが見えてくるわけです。
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