災害時にたびたび浮上するのが、トイレの問題である。内閣府(防災担当)は「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を通じ、避難所でのトイレ確保と管理に関する指針を示している。自治体には、平時からの備えと体制整備が求められている。
ガイドラインによれば、水洗トイレが使用できなくなると、排泄物の処理が滞り、細菌の繁殖によって感染症や害虫の発生が懸念されるという。
不衛生な状況が続けば、避難者はトイレの利用をためらうようになる。その結果、水分や食事を控えるなどして排泄を我慢し、脱水症状や栄養状態の悪化を招く。さらに、静脈血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)などの健康被害や、震災関連死につながるケースもある。
トイレ環境の変化が、物理的な困難を引き起こすこともある。避難所として使用される施設の多くには和式トイレが多く、仮設トイレも同様の傾向にある。こうした設備は、高齢者や車いす利用者にとって使いづらく、排泄の負担をさらに大きくしてしまう。
災害時のトイレには多くの課題が潜んでいる。避難生活におけるトイレ対策には、これまで以上に強い問題意識が必要とされる。内閣府は、市町村(特別区含む)の関係部局が連携し、事前に対策を講じることの重要性を指摘している。
しかし、2023年8月に日本トイレ研究所(東京都港区)が発表した「災害時のトイレの備えに関するアンケート調査」によると、全国の地方自治体332団体のうち、75.9%が「トイレの確保・管理計画を策定していない」と回答した。
こうした現状を受け、解決策の一つとして注目されているのが「トイレトレーラー」である。牽引によって必要な場所へ移動でき、衛生的な環境で利用可能な点が特徴だ。災害時だけでなく、各種イベントなどにも活用されており、今後のさらなる普及が期待されている。
トイレトレーラーとは、移動可能な仮設トイレの一種である。複数の個室を備え、プライベートな空間が確保されている。水洗式のため、衛生的に使用可能だ。
トイレトレーラーの販売事業を手掛けるJPホームサプライ(東京都中央区)のWebサイトによると、トイレトレーラーの主な機能・特徴は以下の通りである。
このように多機能で環境も整っている。
日本トイレ研究所の「トイレマガジン」では、水洗トイレは給電設備、給排水設備、汚水処理設備の全てが機能して初めて成り立つシステムだと説明している。地震や水害などでどれか一つでも機能を失うと、使用できなくなる。
この点でトイレトレーラーは全ての機能をカバーしている。普段使っている水洗トイレと同じように快適に利用できるトイレである。
災害時に活躍するトイレトレーラーは、近くにトイレがない場所でも使用可能だ。屋外イベントでも利用されている。
JPホームサプライの説明資料によると、マラソン大会や花火大会など各種イベントで設置されてきた。コロナ禍にはコロナ患者用トイレとして使われた事例もある。
常設としても利用可能で、市民広場やいちご農園に常設されている例もある。こうした幅広い活用が評価され、2018年3月に静岡県富士市で導入されて以来、2024年3月時点で全国26自治体に広がっている。
移動式トイレはトイレトレーラーだけでない。トラックタイプや、けん引免許不要の普通自動車免許で運転可能なコンパクトタイプの開発も進んでいる。今後は使用目的に応じた選択肢が増える見込みだ。
実際に東京都小平市は災害対応力強化の一環として、「災害用トイレトラック」を購入する方針を示している。移動式トイレは用途に応じて選べるため、利用の広がりが期待されている。
緊急災害時やイベントでの活用が期待されるトイレトレーラーは、使い心地のよさでも高い評価を得ている。所有する自治体からは、
――との声が上がっている。利用者からも、
――と好評だ。トイレの満足度はイベントの満足度に直結する。イベント自体がよくても、トイレの不満で評価が下がることも多い。トイレトレーラーは集客に貢献し、イベントの成功を後押しする重要な役割を担っている。
さらに、トイレトレーラーは周囲にラッピングが可能だ。これにより地域のPR効果も期待できる。今後は災害時だけでなく、地域振興の場面でも活用が広がるだろう。
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