5月27日に履歴書テンプレートを提供するResume Templatesが発表したレポートによれば、53%の企業が正式な解雇ではなく「静かな解雇」を実施している、または今後実施する予定であるという。静かな解雇には「福利厚生の削減」「業務負荷の増加」「オフィス勤務時間の義務化」などが含まれる。
こうした手法は一定の効果があるとされるが、2025年に入って静かな解雇を始めた企業のうち、約9割が「従業員の士気が低下した」と回答している。
Resume Templatesの主任キャリア戦略家であるジュリア・トゥーサカー氏は「ビジネスの観点から見ると、静かな解雇はレイオフや悪評、退職金コストを避けながら人員削減を進める効率的な手段に見えるかもしれない」としつつ、次のように続ける。
「しかし、それは短絡的な見方だ。従業員が辞めたくなるような環境をつくることは、最終的に士気、生産性、信頼関係を損なう。将来的な採用活動にも悪影響を及ぼしかねない。率直に言えば、この手法を広く適用すれば、成果の出せない従業員だけでなく、高い成果を上げている人材までも失うリスクがある」
米国内の1100人以上のビジネスリーダーを対象とした調査結果によると、2025年時点で42%がすでに静かな解雇を開始しており、さらに11%が年内に実施する予定であるという。企業の約半数が「静かな解雇は成果の低い従業員の管理に役立つ」と回答し、41%が「特定の従業員、特にリモート勤務を希望する者を辞めさせようとしている」と答えた。退職金の支払い回避や法的リスクの軽減、正式な解雇による悪評の回避も目的の一部とされている。
リーダーたちは、静かな解雇の手法として「昇進や昇給の遅延」「出社の強制」「報酬やボーナスの削減」だけでなく、一部の従業員を対象とする正式な解雇の実施によって残った従業員の士気を下げる――といった例を挙げている。
従業員の士気が低下するにもかかわらず、静かな解雇を実施している企業の85%は「自発的な離職を促す手段として有効である」と回答。一方で、経済の先行きが不透明な中では、従業員が厳しい労働環境に甘んじてでも現職にとどまる傾向があるため、静かな解雇は必ずしも効果的ではないという見方もある。
実際、トゥーサカー氏は「多くの労働者が今、職場への愛着からではなく、雇用市場の不透明さを理由に職にしがみついている」と述べている。「彼らは、有害な職場環境によるストレスと、転職して給与が下がるリスクとを天秤にかけている。このような判断を強いられる状況は、結局のところ生産性を下げることになる」
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