ソニーの“着るエアコン”はなにがスゴいのか 事業化から6年、20カ国以上に展開(1/3 ページ)

» 2025年07月10日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


 ソニーといえばゲーム・音楽・カメラの印象が強いが、グループのソニーサーモテクノロジーでは“着るエアコン”のような、持ち運び型クーラーも開発・販売している。この5月には「REON POCKET PRO」を発売した。首にかけて背中を冷やす機器で、充電して何度も使用できる。REON POCKETシリーズは2019年に事業化し、今回のPROは2024年に発売した商品よりも面積が広く、冷却機能が向上している。今年のPROは昨年のモデルと比較して、初動の販売数量が3倍だという。

 REON POCKETはエアコンのように冷風を流すのではなく、本体が直接冷えるのが特徴だ。ソニーサーモテクノロジーの伊藤健二社長に取材し、ターゲットなどを聞いた。

ソニーのグループ企業では「持ち運び型クーラー」を販売している(提供:ソニーサーモテクノロジー)

カメラ設計で培った技術から生まれた

 REON POCKETは充電式で、冷やすだけでなく温める機能もある。首にかけて使用し、背中から冷温を伝える仕組みだ。電流を流すと片面が冷え、もう一方の面が暖かくなる特徴を持つ「ペルチェ素子」を用いたデバイスであり、スイッチングで冷温を切り替えられる。

 夏に使用する場合、背中に接触する面が冷え、素子の外側に面する部分は暖かくなる。外側面の熱は、排熱用のファンで吐き出す仕組みだ。直接的な接触で冷温を伝え、エアコンのように冷風・温風を流すわけではない。

冷やす機能と温める機能がある(同前)

 ソニーサーモテクノロジーは2023年設立で、ソニーグループ内では新興企業だ。どういった背景で設立し、REON POCKETの発売に至ったのか。伊藤社長は次のように話す。

 「私は2006年から2014年までカメラの設計をしており、排熱に関わる研究をしていました。上海にいたころ37度の猛暑に見舞われ、排熱の知見をサーモデバイスとして生かせないか思い付いたのがREON POCKET開発のきっかけです。業務の傍らで実験し、2019年にクラウドファンディングを達成して事業化し、売れ行きが良く、毎年増産していたので2023年に法人化しました」

同前

 ソニーといえばゲームやカメラなどが代表的な製品であり、サーモデバイスはジャンルが大きく異なる印象を受ける。しかし、REON POCKETの配線や構造は既存の技術を活用したものであり「ソニーらしい」設計であると伊藤氏は語る。

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