分かりにくい駅名が多い理由の一つに、駅名改称にかかる費用の問題がある。駅名を変えるには、駅看板の文字だけでなく、切符発券や車内放送などシステム全体の変更が必要で、莫大な費用がかかる。
JR東日本の場合、その費用は約3億6000万円にも及ぶ。首都圏の鉄道会社であっても簡単に出せる額ではなく、改称に踏み切れないのも当然だろう。
実際、東洋経済オンラインの2018年8月の記事「なぜ今?『ゆりかもめ』が駅名を変える不思議」では、りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道に国際展示場駅の改名について聞いた内容が掲載されている。
それによると「東京ビッグサイトの方が分かりやすいという声は承知しているが、駅名を変更する費用が膨大で、施策の優先順位は低い」との回答だった。りんかい線の東京テレポート駅や国際展示場駅の改称は、現状では難しいといえるだろう。
ゆりかもめでは何度か駅名改称が行われているが、青海駅は駅周辺の地名であることもあり変更が難しいと指摘されている。この記事を書いた杉山淳一氏も運営会社のゆりかもめ(東京都江東区)に確認した際、同様の見解が示されている。
ただし蛇足だが、杉山氏は個人的な意見として「ヴィーナスフォート前」に改称すべきだと提案していた(当時ヴィーナスフォートは営業中だった)。筆者としても、2025年のトヨタアリーナ東京開業を踏まえ、
――などへの改称が望ましいと考えている。
前述の理由を踏まえると、お台場の駅名は単に分かりにくいだけでは改称の十分な理由になりにくい。しかし臨海副都心の開発が始まってから30〜40年が経過し、状況は変わっている。
近年の報道では、当初期待された住居やビジネスの機能は失われ、バブル崩壊の影響もあり、丸の内や六本木、渋谷など他の都心部に奪われていると指摘されている。
商業施設の競争も激化し、
――など、かつての人気施設が次々と閉館している。その結果、空き地が目立つようになった。お台場・青海地区では17.9ヘクタール、東京ドーム4個分の土地が未利用のままだ。
オフィスビルの空きも増えており、入居率の低いビルもある。例えば、かつて東京テレポート構想の中心だったテレコムセンタービルの2023年末時点の入居率は76%にとどまる。台場フロンティアビルはさらに低く、41%である。都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の平均空室率3.73%と比べて大きな差だ。
未利用地や空室の増加を踏まえると、お台場のまちづくりは再考が必要な段階にある。すでにトヨタアリーナ東京など、次の数十年を担う施設の整備が始まっている。このタイミングで、当初計画から外れ紛らわしくなったゆりかもめやりんかい線の駅名も改称などの対応が求められるだろう。
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