大型見本市で使われる展示場「東京ビッグサイト」をはじめ、オフィスビルや商業施設が立ち並ぶお台場。ここは東京の最先端を象徴する地区であり、毎日多くの人が仕事や買い物、イベント参加のために訪れている。
しかし、そんな未来都市の顔であるお台場においても、アクセスの要である「ゆりかもめ」や「りんかい線」の駅名が分かりにくいという意見は根強い。駅名が混乱を招き、訪問者の利便性を妨げている現状は看過できない課題だ。
今回はお台場の代表的な3つの駅名を取り上げ、なぜ紛らわしい駅名が残り続けるのか、その背景と今後の可能性について、熱を込めて私見を述べたい。
まず、最も有名な事例を紹介する。それはゆりかもめの青海(あおみ)駅だ。この駅と同名の駅が新潟県のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインにも存在する。
しかし、より紛らわしいのは東京都内にある青梅(おうめ)駅との類似性である。「青海」と「青梅」は漢字が一字違いで、部首も異なるだけだ。「あおみ」という読み方を知らなければ、スマートフォンの変換で間違うことも十分あり得る。
青梅駅は同じ都内でもお台場から遠く離れた多摩地区西部にある。一度地名を間違えると直線距離で50キロ以上、青梅線・中央線・山手線・ゆりかもめを乗り継ぐ必要がある。
この2駅の混同は、土地勘のない訪問者が多いZepp Tokyoやヴィーナスフォート(青海駅近くにあった施設)で多発した。2018年にはZepp Tokyoのライブ出演予定だったアイドルグループ「HIGHSPIRITS」のメンバー小室あいかが青梅駅に到着し、ライブに出演できないトラブルが話題になった。
他にも芸能界では駅名を間違えたタレントが数人おり、2010年代以降、ツイッター(現X)の普及でたびたび報じられている。
現在はZepp Tokyoを含むパレットタウンが閉鎖されたため、こうしたトラブルは減ったと考えられる。しかし2025年には青海駅周辺にBリーグの試合が行われるトヨタアリーナ東京が開業する。土地勘のない利用者が増えることが予想されるため、何らかの対策が必要になるかもしれない。
続いて紛らわしいのは、りんかい線の東京テレポート駅である。青海駅から歩いて約5分の距離にあり、りんかい線を使う場合のフジテレビ本社の最寄り駅としても知られている。
しかし駅名の「テレポート」という言葉に対し、何の意味か首をかしげる人は多いだろう。英語のTeleportは「瞬間移動」を意味するが、「東京テレポート」の「テレポート」は別の意味を持つ。「情報通信基地の機能を備えた都市」という意味で説明されているのだ。
この駅周辺は1988(昭和63)年、副都心の名称として「東京テレポートタウン」と名付けられた。テレビ会議やケーブルテレビなど、当時の最新情報システムを備えたオフィス都市の整備計画があった。
しかしバブル崩壊により計画は頓挫し、1990年代末には完全に消えたコンセプトとなった。現在の東京テレポート駅周辺は最先端企業のオフィスではなく、ダイバーシティ東京など観光地が多く立ち並んでいる。
かつての構想の名残として名前が残るだけで、実態とかけ離れた存在だ。そのため、「東京瞬間移動駅」というよく分からない名前と思われてしまっているといえるだろう。
最後に紹介するのは、東京テレポート駅からりんかい線で1駅隣の国際展示場駅だ。名前のとおり、東京国際展示場(東京ビッグサイト)の最寄り駅であり、コミックマーケットなど大型イベント時には非常に混雑することで知られている。
なお、東京国際展示場にはもうひとつ、ゆりかもめの東京ビッグサイト駅もある。かつては東京ビッグサイト駅も「国際展示場正門駅」と呼ばれており、非常に紛らわしかったが、2019年により親しまれた「東京ビッグサイト」という愛称に変更された。
ただし、りんかい線の国際展示場駅とゆりかもめの東京ビッグサイト駅は乗り換え駅として連絡しているわけではない。国際展示場駅が乗換駅となるゆりかもめの駅は、この場所の地名に由来する有明駅だ。
周辺のホテルや大学キャンパス、商業施設も「国際展示場前」という名前は使わず、武蔵野大学有明キャンパスや東京ベイ有明ワシントンホテル、有明ガーデンなど、地名である「有明」の名称が多く使われている。
東京ビッグサイトは現在もにぎわう施設で、実際の最寄り駅であることから青海駅や東京テレポート駅ほど紛らわしくはない。しかし、周囲の地名と駅名が異なり、乗り換え駅の名称も統一されていないため、りんかい線の国際展示場駅は少し浮いた存在となっているといえるだろう。
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