リテール大革命

Amazon「売らない領域」が稼ぎ頭に 広告+サブスク+出品者支援、小売を超える売上高Retail Dive

» 2025年08月07日 08時00分 公開
[Daphne HowlandRetail Dive]
Retail Dive

 米Amazon.comが発表した2025年第2四半期(4〜6月期)の決算によれば、広告、出品者サービス、サブスクリプションといった小売以外の事業が引き続き急成長を遂げており、小売部門の売り上げを上回る結果となった。これらの数字には、同社の大規模クラウド事業であるAWS(Amazon Web Services)の売り上げは含まれていない。

2024年4月13日、テキサス州ヒューストンにあるAWSオフィスビル。Amazonの小売事業は、クラウドコンピューティング事業をはじめとする収益源によって支えられている(Retail Dive)

広告23%、サブスク12%増……周辺事業で本業超える高成長

 第2四半期におけるAmazonのオンラインストア売上高(ネット販売)は前年同期比11%増の615億ドルとなり、実店舗売上も7%増の56億ドルに伸びた。

 一方で、それに関連する周辺事業はさらに高い成長率を記録した。サードパーティ(第三者)出品者向けサービスは11%増の403億ドル、広告事業は23%増の157億ドル、サブスクリプションサービスは12%増の122億ドルに達した。

 アナリスト向け電話会見の中で、CEOのアンディ・ジャシー氏は、Amazonで取り扱う商品ラインアップの拡充を強調。新たに「Away」「Aveda」「Marc Jacobs Fragrances(マーク ジェイコブス フレグランス)」などが追加されたほか、Saks Global(サックス・グローバル)との提携によって、「Dolce & Gabbana」「Etro」「Stella McCartney」「Rosetta Getty」「La Prairie」などのブランドも取り扱いを開始した。また「多くの要望が寄せられていたNike(ナイキ)製品の復活」も発表された。

“売らない領域”がAmazonの稼ぎ頭に 広告・クラウドが下支え

 小売事業はAmazonにとって依然として巨大な柱であるものの、広告、サブスクリプション、マーケットプレイス出品者向けサービスといった周辺事業がその存在感を強めつつある。第2四半期には、これらの非小売分野がオンラインストアや実店舗と同等、あるいはそれ以上の成長率を示し、合計売り上げでも小売を上回った。

 オンラインと実店舗の合計売り上げは670億ドル超だったのに対し、広告、サブスクリプション、出品者サービスの合計は680億ドルを超えた。さらに、AWS部門も前年同期比17.5%増の約310億ドルに達し、引き続きAmazon全体の成長を支えている。

 市場調査会社Telsey Advisory Groupのアナリスト、ジョセフ・フェルドマン氏は第2四半期レポートにおいて、「AWSと広告事業の堅調な成長と収益性は、引き続き小売部門を上回り、全体を支えるだろう」と述べている。

 Amazonは競合他社と同様に、小売業界が直面する課題にも対応している。その一つが関税をめぐる不確実性である。

 ジャシー氏は、「関税が小売価格や消費に与える影響については、誤った報道が多く見られる。これまでのところ、需要の減退や価格の大幅な上昇といった兆候は確認されていない」と述べた上で、「今後何が起こるかを正確に予測するのは不可能だ」とも語った。

 一方、トランプ前政権の通商政策の一環として議論されている「de minimis(デ・ミニミス)制度」の廃止も注目されている。これは中国などからの少額輸入品に課税を免除する制度で、廃止されれば、Amazonが「Shein」(シーイン)や「Temu」(ティームー)といった超低価格ECサイトに対抗して展開している「Amazon Haul」の成長につながる可能性がある。

 データ分析を手掛けるGlobalDataのマネージングディレクター、ニール・ソーンダース氏は「この市場セグメントの混乱によって、Amazonが最大の恩恵を受けている」と述べ、「この混乱は永続的ではないが、SheinやTemuがこれまで享受してきた大きな優位性はすでに失われており、それがAmazonにとって有利に働いている」と分析している。

 さらにAmazonは、地方市場への進出も強化している。2025年6月には、年末までに4000以上の小規模都市および農村地域に当日または翌日配送を拡大する計画を発表。2026年までに地方向け配送ネットワークに40億ドル以上を投資する方針も明らかにしていた。

 ソーンダース氏は「地方市場での一つ一つの成果は小さいかもしれないが、米国内の地方の数や小売競合の少なさを考えれば、Amazonにとっては非常に大きな成果となる」と評価している。

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR