求職者による詐称行為は今後さらに深刻化する可能性がある――米ガートナーが7月31日に発表したレポートによると、2028年までに、求職者プロフィールの4分の1が偽造である可能性があるという。
ガートナーが求職者3000人を対象に実施した調査では、6%が「面接時に不正を行った」と回答。その手口は「自分ではない人物になりすます」、または「他人に自分のふりをさせる」といったものだ。採用プロセスにおけるAIの利用拡大は、採用担当者の懸念をさらに高める要因になると指摘している。
「雇用主にとって、求職者の本当の能力や本人確認そのものがますます難しくなっている」と、ガートナーの人事部門シニアリサーチディレクターであるジェイミー・コーン氏は述べた。「求職者の詐称は、不適切な採用以上に深刻なサイバーセキュリティリスクを生み出す可能性がある」
例えば、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)』に掲載された研究によれば、求職者が自分を評価しているのがAIだと認識すると、AIが重視していると考えるスキルに合わせて自分の能力をゆがめて見せる傾向があるという。これにより、採用チームは応募者の実際の能力や人物像を正確に評価できなくなるおそれがある。
また、ガートナーが実施した別の調査では、求職者側も雇用主によるAI利用に懸念を示している。「AIによる公平な評価を信頼している」と答えたのはわずか4分の1にすぎず、半数が「AIが応募書類を選別している」と考えていた。さらに3分の1は「AIが不当に不合格にする可能性」を懸念している。加えて、応募している職種が実在すると信じている求職者は全体の半数にとどまった。それでもなお、求職者の4割は応募プロセスでAIを活用しており、その主な用途は履歴書やカバーレター、ライティングサンプル、課題回答の文章作成であった。
ガートナーは、求職者の詐称を防ぐためには多層的な対策戦略を構築することを推奨している。例えば、AIの許容利用範囲について明確な基準を設け、不正検出の取り組みや、不正発覚時の法的結果について事前に通知することが挙げられる。採用担当者は、不正を見抜くための評価手段として対面面接を取り入れることができる。ガートナーの別調査では、62%の求職者が「対面面接が必要な職種の方が応募意欲が高まる」と答えている。
さらに、初期の採用段階を過ぎた後も、バックグラウンドチェックの強化、リスクベースのデータ監視、本人確認、採用システム上での異常検知アラートなど、システムレベルでの検証を行うことが有効である。
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