日本自動車販売協会連合会が2025年7月に発表した資料によると、「登録車 + 軽自動車販売台数(新車)」の合計は以下のとおりだ。
新車の販売台数は微増しているが、前年比は年々低下しており、伸び率は鈍化している。自動車リース市場も頭打ちの兆しがある。日本自動車リース協会連合会の発表によれば、2025年4月の契約台数は15万5716台。前年比は95.1%で、前年を下回った。
一方、堅調に伸びているのがレンタカー市場である。全国レンタカー協会による「運輸支局別レンタカー車両数」では、以下のとおり年々増加している。
自動車販売やリースが縮小傾向にあるなか、レンタカーはコロナ禍を経て市場拡大が続く。人口減少と公共交通の縮小で移動手段が乏しくなった地域では、代替的な交通インフラとしての役割も強まっている。
特に、維持費や運転頻度の低下を理由に車を手放した高齢者にとって、必要なときだけ使えるレンタカーは現実的な選択肢となっている。
こうした需要の変化に対応するかたちで、レンタカー業界も高齢化社会に即したサービスの進化を続けている。では具体的に、どのような施策が講じられているのか。
レンタカーは、高齢者にとって単なる移動手段にとどまらず、生活の質を高めるインフラになりつつある。
例えば、
――といった高齢者の声に応え、カルノリレンタカー(大阪市)は自由度の高い格安レンタカーを提供している。
料金は任意保険・自賠責保険を含めて1日4000円から。車種は小型で運転しやすいモデルを中心にそろえる。給油は使用分のみの補充で済み、予約はLINEで完結。家族による代理予約も可能で、高齢者が安心して利用できる仕組みを整えている。
高齢者を対象としたこうした取り組みは他社にも広がっている。近年では、レンタカー返却後の“その先の移動”までを支援する新たなサービスも登場し始めた。
2025年6月、つばめ交通(広島市)と広島レンタカー(同)は、二次交通の課題解決に向けた新サービスを開始した。移動支援モビリティ「WHILL(ウィル)」を活用し、観光や日常生活における“最後のひと移動”を補完する。
WHILLを開発したのはWHILL(東京都品川区)。電動車いすに分類され、免許なしで歩道を走行できる。歩行が困難な高齢者やケガをした人でも、安心して目的地にたどり着けるのが特徴だ。
二次交通とは、空港や駅から観光地までの“つなぎ”を担う交通機関のこと。都市部ではバスや鉄道が充実している一方、地方では未整備のエリアも多く、徒歩での移動を余儀なくされる場面もある。
広島レンタカーはこうした課題に対応するため、レンタカーとWHILLをセットで提供する。車による長距離移動と、降車後の短距離移動を一体で支えることで、高齢社会における移動の利便性を高める狙いだ。
高齢化社会の進行にともない、レンタカー業界も対応を進めている。近年では、介助や車いすが必要な場面で使える専用車両を扱うレンタカー事業が広がりつつある。
こうした車両は「福祉車両」と呼ばれ、車いすに乗ったまま乗車できる点が特徴だ。介助者の負担軽減にもつながる。ただし、構造が特殊なため購入には多額の費用がかかる。そこで注目を集めているのが、福祉車両のレンタカー提供という選択肢だ。
香川県坂出市の坂出自動車では、個人利用向けの軽自動車タイプから、車いす2台を同時に搭載可能な10人乗り大型ワンボックスまで幅広く取りそろえる。通院や施設送迎に対応し、予約は24時間オンラインで受け付けている。自家用車が事故や故障した際の代替利用も想定されている。
また、カルノリレンタカーでは、「自分では運転できないがクルマを使いたい」というニーズにも応えている。通常は運転者本人が契約しなければならないが、同社では“運転者と契約者が異なる”ことを許容。知人への運転依頼や運転代行との併用も可能とした。
こうした柔軟なサービス設計が、レンタカー市場の拡大を後押ししている。
高齢化が今後さらに深刻化するなかで、移動に課題を抱える人々を支えるサービスの重要性は高まっていく。レンタカー業界の対応が、その一端を担うことになりそうだ。
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