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Amazon、米当局へ「約3700億円」支払いへ プライムの解約設計めぐり議論

» 2025年09月27日 06時00分 公開
[ロイター]

 米連邦取引委員会(FTC)は9月25日、Amazon.comがプライム会員獲得にあたり顧客を欺いたとの疑惑をめぐり、罰金および会員への返金として計25億ドル(約3700億円)を支払うことで和解に合意したと発表した。

 FTCと消費者にとっての勝利ではあるが、Amazonにとっては痛手ではない。同社の売上高は約33時間で25億ドルに達する規模であり、発表後の株価はほぼ変化しなかった。

3500万人のプライム会員が返金対象に

 FTCは、2017〜2022年に、Amazon経営陣が登録・解約手続きを分かりやすくする提案を却下していたと主張。2022年にFTCの調査を受けてからようやく改善され、翌年FTCが提訴した。

 約3500万人のプライム会員が、15億ドルの返金基金から支払い対象となる。また、AmazonはFTCに対して10億ドルの罰金を支払う。なお、この和解においてAmazonは不正行為を認めていない。

 裁判所文書によれば、2019年6月23日〜2025年6月23日に特定のオファー経由でプライムに登録し、その後ほとんど特典を利用しなかった顧客には、自動的に51ドルが支払われる。また、その期間中にプライム解約を試みて失敗した顧客も、請求を申請することで返金を受けられるという。

 Amazonは声明で「今回の和解により、今後は顧客に集中することができる」と述べた。さらに「私たちは、顧客がプライムを登録・解約する手続きを明確かつ簡単にするために非常に努力しており、世界中の何百万人もの忠実なプライム会員に大きな価値を提供している」と強調した。

 和解条件として、Amazonはプライム契約を拒否できる「明確で目立つ」ボタンの設置や、解約手続きの簡素化に同意した。また、登録時に契約条件をより明確に開示し、独立した監督者を配置して順守状況を監視する。Amazonによれば、これらの変更はすでに導入済みであり、新たな取り組みはほとんど必要ないという。

ロイターより

 FTC関係者によると、今回の和解額はFTCによる消費者救済としては過去2番目の規模であり、トランプ政権期に始まった「大手IT企業に厳格な姿勢」を掲げる同機関の大きな成果となった。

 アンドリュー・ファーガソンFTC委員長は「これは、解約が困難な欺瞞(ぎまん)的サブスクリプションにうんざりしている数百万の米国人にとって、記録的かつ画期的な勝利だ」とコメントした。

 FTCはシアトル連邦地裁での裁判中に和解を発表。裁判では、Amazonが顧客の意志にかかわらず会員登録させようとしたと主張していた。

 FTCの調査によれば、Amazonの幹部や社員は社内で「サブスクリプション獲得はやや怪しい世界だ」「望まない登録に誘導するのは“見えざるガン”だ」などと発言していた。和解により、こうした社内発言が公にさらに取り上げられることは避けられた。

 訴訟を提起した前FTC委員長リナ・カーン氏は、Xで「25億ドルの和解はAmazonにとっては大した額ではなく、顧客を故意に害した経営陣にとって大きな安堵だろう」と批判した。

 FTCによる調査はトランプ政権下で始まり、訴訟はバイデン政権下で提起された。

 Amazon創業者ジェフ・ベゾス氏はかつて「プライムに入らないことは無責任だと感じるほど魅力的にしたい」と語った。プライムは2005年に年会費79ドルで導入され、その後値上げを重ね、直近では2022年に139ドルとなった。2025年上半期だけでプライム関連収益は239億ドルに達し、同社の成長をけん引している。

 FTCによれば、同社は「当日無料配送」などの広告を使い、無料体験を勧誘したが、それがプライム登録につながり、後に月額料金が発生することを十分に明示していなかった。

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