米Amazonは9月26日、米連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)との和解に合意し、プライム会員制度を巡る「欺瞞(ぎまん)的」(deceptive)な勧誘・解約妨害の疑いに関連して25億ドル(約3800億円)を支払うことになった。訴訟開始からわずか3日後の決着だった。
FTCは、Amazonが「操作的で、強制的、または欺瞞的なユーザーインターフェース設計」を用いて利用者をプライムに加入させ、解約を困難にしていたと主張していた。今回のケースは、サブスクリプションビジネスにおける不適切な勧誘手法が、顧客体験だけでなく法的・財務的なリスクにもつながることを浮き彫りにした。
Amazonとその経営陣は和解に際し、違法行為を認めていない。広報担当のマーク・ブラフキン氏は、関連メディアCX Diveに対し次のようにコメントした。
Amazonと経営陣は常に法律を順守しており、この和解によって今後は顧客のためのイノベーションに集中できる。私たちは、プライム会員への登録も解約も明確かつ簡単にできるよう尽力している。そして、世界中の何千万ものプライム会員に大きな価値を提供している。
今回の和解に基づき、Amazonは10億ドルを制裁金として支払い、さらに被害を受けた顧客に15億ドルを返金する。またFTCによれば、Amazonは今後「違法なプライム加入および解約手法」を中止する。
米市場調査会社Forrester(フォレスター)の主席アナリスト、ジュディ・ウィーダー氏は「和解金額の大きさは、対象期間中にプライム会員だった消費者の数が多いことに影響されているだろう」と指摘する。
FTCによるAmazonへの訴訟は2023年に当時の委員長リナ・カーン氏(バイデン政権任命)によって開始され、その後はトランプ政権任命のアンドリュー・ファーガソン委員長の下で継続された。ウィーダー氏は「裁判が始まってすぐに和解に応じたのは、最後まで争えばAmazonにとって財務的な負担がさらに大きくなると予想したからだろう」と分析する。
米市場調査会社Emarketer(エマーケター)のアナリスト、ザック・スタンボール氏は「この和解はプライムの優位性を揺るがすものではない」とみる。
プライムは2024年だけで440億ドルの会費収入を生み出した。今回の和解金はそのわずか5.6%にすぎない。世界で2億人以上、米国世帯の4分の3が加入するプライムは、Amazonのビジネスモデルの屋台骨だ。
FTCが訴訟を起こして以来、Amazonは解約プロセスの改善を進めている。ウィーダー氏は「Amazonはすでに、FTCが策定しながら棚上げされた『クリックで解約』ルールの趣旨に沿うよう対応を始めていた」と話す。
同ルールは、本来なら加入と同じくらい簡単に解約できる仕組みを企業に義務付けるものだったが、ファーガソン委員長の下で撤回された。
米Watermark Consulting(ウォーターマーク・コンサルティング)の創業者であるジョン・ピコルト氏は次のように指摘する。
Amazonプライムがこの問題に巻き込まれた事実は、たとえ違法行為を認めずに和解したとしても、顧客獲得を最大化し、離脱を最小化しようとする誘惑が、最も評価の高い企業でさえ強いものであることを示している。
© Industry Dive. All rights reserved.
Special
PR注目記事ランキング